腐女子が夢中の「ヒプマイ」って何? ファンが大金を注ぎ込みたくなる“仕掛け”

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“推し”を優勝させるために同じCDを10枚買う

 6人の声優たちが3・3に分かれ、「ラップで歌合戦」するコンセプトになっている。何も予備知識もなく聴いていたが、耳に馴染むいい曲も多い。

「実はヒプマイの曲は有名アーティストたちが作詞作曲を手掛けているんですよ。Zeebra、Creepy Nuts、ウルフルズのトータス松本、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔など大物が続々参加し、いまや声優ファンだけでなく純粋に音楽好きな人たちにも注目されています」(みゆきさん)

 あっという間に2時間のライブは終わった。彼女たちに指摘されて確認すると、「ヒプマイライブ」はTwitterトレンド第1位になるほど日本中で注目されていたようだ。綾子さんによれば、

「昨年3月に同じように開催されたライブ配信は無料だったので370万人が視聴し、Twitterトレンド世界1位を獲得しています。今回は1回4000円の有料配信でしたが、これから残り2公演もあるので、数十万人はいくと思いますよ」

 帰りしな、2人が何やら話し込んでいる。

「ねえ、何枚買う?」
「うーん、10枚はいっちゃうかも」

 2月24日に発売される新曲のCDを何枚買うか相談しているようだ。しかし、なぜ同じCDを複数枚買う必要があるのか。そのワケをみゆきさんが明かしてくれた。

「ライブ配信やCDを購入するごとに投票券が1枚もらえるんです。つまり、10枚買えば10票、推しに投票できるんですよ。票数の多かった『ディビジョン』がトーナメントで勝ち上がり、ラップバトルの優勝が決まる。勝ったチームには新曲が提供され、どこが勝つかで後々のストーリーも変わってきます。ああ、“推し”を勝たせたい……」

人気を支えているのは“腐女子”

 CD1枚は税込2200円。みゆきさんは惜しげもなく、2万2000円を「オオサカ・ディビジョン」の優勝のためにつぎ込むというのだ。しかし、この商法、どこかのアイドルグループでも聞いたことがあるような……。彼女たちによれば、こんなのは序の口だという。

「いやー、今月はきついですよ。ゲームアプリで、推しのカードが引きたくてガチャに3万つぎ込んじゃったし」(みゆきさん)

「来週からは舞台が始まるんですが、1公演が1万8000円。4公演は現地で見て、残りはオンライン配信で『全通』(すべての公演に通うこと)する予定です」(綾子さん)

 このプロジェクトはメディアミックスが旺盛で、マンガ化、舞台化、アプリゲーム化、アニメ化と広く展開しているため、出費が止まらないというのだ。綾子さんは「これまでいくら使ってきたかわからない」と言い、みゆきさんは「月に8万は使っています」と言い切った。

 ちなみに、1月23日にはコンテンツのVR(仮想現実)化も発表。直後に、提携するVRアプリの株価が急上昇するなど、とにかく大変な人気なのである。

 もっとも、大人である彼女たちが自分たちのお金を何に遣おうと自由なわけで、決して非難されるような話ではない。ただ、解せないのは、彼女たちがこのファンタジーのどこに惹かれて大枚をはたいているかという点である。綾子さんが語る。

「ヒプマイ人気を支えているのは、男同士の恋愛を妄想することを好む、“腐女子”と呼ばれる女子たちです。私たち“腐女子”は、ライバルや腐れ縁、血縁、幼馴染、因縁の相手といった、男同士の唯一無二の関係性に“萌え”を感じます。ヒプマイでは、そういったキャラクター間の関係性が丁寧に描かれ、しかもみんなイケメンキャラ。それがラップでディスり合うところに興奮するんです」

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