「バイデンから電話が来ない」と気を揉む韓国人 原因は「習近平コール」か、それとも――

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バイデンの顔に泥を塗った文在寅

――なるほど。文在寅政権は米国の顔にしっかりと泥を塗っていた……。

鈴置:そこがポイントです。そんなやましさがあるから、「バイデンからの電話の遅れ」に韓国人は気を揉むのです。習近平主席と先に電話したばかりに米国を怒らせ、冷たくされるのではないか、と悩んでいるわけです。

 中韓首脳の電話協議を批判的に見ていた保守の人々にすれば「そら、見たことか!」といった心境でしょう。

――韓国人は日本より「上」か「下」か、を気にしますからね。

鈴置:日本の首相が先に米国の新大統領と話すと、韓国人のメンツが傷つくだけではなく、実利面でも悪い影響が出ます。米国の朝鮮半島政策が日本に引っ張られると、韓国に不利に働きがちです。

 日韓の間では利害が相反することが多い。例えば、文在寅政権は北朝鮮に経済援助したくて仕方がない。一方、日本は非核化前の援助は絶対に反対。北朝鮮の度重なる食い逃げに懲りているからです。

 日韓慰安婦合意も同様です。バイデン氏が副大統領時代に保証人となってまとめたこの合意を文在寅政権はいとも簡単に破った。まさか、米国にバイデン政権が登場するとは想像もしていなかったのでしょう。

 そこで慌てて「慰安婦合意は認めている」と軌道修正しました。でも、それは口先だけで破り続けていることに変わりはない(「韓国人はなぜ、平気で約束を破るのか 法治が根付かない3つの理由」参照)。

 菅義偉首相がバイデン大統領に電話で「文在寅政権は慰安婦合意を守っているフリをし始めましたが、実際は破り続けています」と言ったらどうなるでしょうか。

 実際、1月28日(米国時間1月27日)の電話協議でそう伝えた可能性もある。韓国が話題に上ったかを日本政府は明かしませんでしたが、韓国メディアはこの協議の中身に深い関心を寄せています。

日米の「韓国外し」が始まった?

 ただ、日米首脳の間で韓国問題が話し合われたのなら、「悪口」や「陰口」であっても韓国にとってまだ、幸せかもしれません。もっと不幸なのは、「韓国無視」で日米が合意した場合です。

 日米両国は首脳の電話協議について公式な文書を出しましたが、登場するはずの「韓国」が見当たらないのです。

 米国側の発表によると、「両首脳は朝鮮半島の完全な非核化の必要性で合意した」とありますが普通、言及される「米日韓の協力によって実現する」という部分がありません。

 米国時間1月26日(日本時間1月27日)の茂木敏充外相とA・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官の電話協議に関する米国側の発表では「米日韓の協力」がちゃんと入っていました。

 なお、日本側の発表は「首脳」にしろ「外相」にしろ韓国には一切触れていません。中韓首脳が電話で協議したことは韓国・日本時間の1月27日午前に発表されました。

 日米の「外相」協議には間に合わず、28日の「首脳」には間に合って「韓国外し」が行われたのかもしれません。あくまで推測ですが。

「中国に賭けるな」と脅したバイデン

――米国が「韓国無視」戦略を採るでしょうか……。

鈴置:厳密には「無視して見せる」作戦です。韓国は構ってやると「自分が必要なのだ」と勘違いしてつけ込んでくる。「無視」あるいは「軽視」すれば、焦って言うことを聞くとの判断です。

――「離米従北」の文在寅政権にも効くでしょうか?

鈴置:この政権には効かなくてもいいのです。どうせ2022年5月に政権交代します。「中国や北朝鮮の言いなりのままなら捨てるぞ」と韓国人を脅せば、次の大統領選挙で親米派が返り咲く可能性が増します。

――バイデン政権にそこまで読み切る「韓国通」がいるのでしょうか。

鈴置:案外と多いのです。まず、バイデン大統領本人です。デイリー新潮の「韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」で指摘したように、副大統領時代からバイデン氏は「韓国人の恐中病」を見抜いていた。

 2013年12月に訪韓したバイデン氏は朴槿恵(パク・クネ)大統領と会談した際、「米国の反対側(中国)に賭けるな」と発言しました。

 当時、韓国政府は「日本が慰安婦に謝罪しないから韓米日の軍事協力に参加できない」と屁理屈をこねていた。この言い逃れに対し「嘘はいい加減にしろ。本当は中国が怖いだけだろ」と図星を突いたのです。

 米国を出し抜いての中韓首脳の電話協議を見て、バイデン大統領は「恐中病の韓国がまた、米中の間で二股をかけているな」と苦笑いしたことでしょう。

 先ほど申し上げたように、副大統領時代の2015年12月には、日韓慰安婦合意の保証人も務めました。韓国が平気で約束を破ることもよく知っています。

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