プロ入り2年目で今年飛躍しそうな10人選手、大穴は巨人の高卒左腕「井上温大」か

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 いよいよプロ野球のキャンプのシーズンがやってきた。キャンプといえば、若手選手の台頭が楽しみの一つ。なかでも注目したいのが、2019年のドラフト入団組だ。コロナ禍という特別な状況のなか、プロ野球選手としての第一歩を踏み出した彼らは、たくましい成長を遂げているに違いない。そこで今回はまだまだ1軍経験がとぼしいものの、プロ2年目を迎えた若手の中から、今季飛躍しそうな選手をご紹介したい。

 まずは、東京ヤクルトの奥川恭伸。最速154キロを誇る右腕は昨季、2軍で7試合に登板し、1勝1敗、防御率1・83という好成績を残した。待望のプロ1軍登板となった11月10日の広島東洋戦では2回0/3を投げ、被安打9の5失点とプロの洗礼を浴びる形となってしまったが、その屈辱をバネに今季は開幕ローテーション入りを狙いたい。

 2人目は、ドラ2で日体大からヤクルトに入団した右腕・吉田大喜である。即戦力として期待されたものの、開幕1軍入りはならず。そこから7月17日の広島東洋戦で待望のプロ初登板初先発を果たし、8月7日の横浜DeNA戦でプロ初勝利を挙げている(6回を投げて2失点)。1年目は計14試合に登板して2勝7敗、防御率5・21、53奪三振という成績に終わったが、奥川よりも1軍経験が積めたことが何より大きい。2年目の今季は武器である最速152キロのストレートとスプリットに磨きをかけて開幕からの先発ローテーション入りに期待がかかる。

 福岡ソフトバンクに東北福祉大からドラ3で入団した津森宥紀にも注目したい。昨シーズンはプロ2試合目の1軍登板となった6月24日の埼玉西武戦で5回から3番手で登板し、1回1/3を投げ、相手打線を無安打で封じて、プロ初勝利をゲット。20年の12球団新人投手の初勝利一番乗りとなった。最終的には14試合に登板して1勝0敗3ホールド、防御率2・76、17奪三振の成績を残した。

 津森は最速150キロを誇る右のサイドハンドで、直球のほかにスライダー、チェンジアップを武器にしている。独特のフォームから投げ込まれるボールの軌道は右打者の背中からホームベースに向かってくる。右打者にとってはやっかいな存在だろう。チームにはいない右のサイドスローは打者の内角を突く強気の投球も持ち味のひとつ。今季もリリーフ起用が濃厚で、勝利の方程式の一員に加わりたいところだ。

 奥川と同じ高卒投手ならオリックスのドラ1左腕・宮城大弥にも期待できる。昨季はウエスタン・リーグで13試合に登板し、防御率2・72と最多勝利投手賞に輝く6勝をマークした。そこからシーズン終盤には1軍初昇格を果たし、10月4日の東北楽天戦で、プロ初登板初先発。さらに3回目の先発となった11月6日の北海道日本ハム戦では5回を投げ、被安打7、7奪三振、3失点の投球内容でプロ初勝利を挙げた。結局、1軍では3試合に先発登板し、1勝1敗、防御率3・94、16奪三振とまずまずの成績であった。サウスポーから投じられる右打者の内角を突く最速153キロの直球は威力満点で、今季は先発ローテーション入りする可能性がある。

注目の野手は

 ここからは野手編である。

 まず、中日の高卒ドラ1・石川昴弥に注目したい。昨年、2軍では打率2割7分8厘、3本塁打、24打点とまずまずの結果を残した。ただ、1軍では14試合に出場し、打率2割2分2厘、0本塁打、1打点とプロの高い壁に弾き返される結果に。それでも右の和製大砲としての期待は高いものがある。

 問題はサードには不動のレギュラー・高橋周平がいる点だろう。出場機会を増やすために、三塁以外のポジション――できれば外野を守ってみるというのはどうだろう。というのも、新外国人選手のマイク・ガーバー外野手は新型コロナウイルスの影響で来日が遅れるうえ、平田良介や福田永将ら外野手のレギュラーを狙う選手は、典型的なスペ体質(故障頻度が高い選手を指す)でシーズンを乗り切ることが困難になっているからだ。自慢の打撃で石川がアピールできれば、外野での出場機会を増やせるし、もしくは一気にレギュラー取りも可能なのである。果たして彼の決断や如何に。

 この石川と並ぶ右の和製大砲候補が阪神にもいる。ドラフト2位入団の外野手・井上広大だ。プロ1年目は自慢の長打力を発揮し、ウエスタン・リーグ2位となる9本塁打を放った。さらにシーズン終盤には1軍昇格も果たし、6試合に出場している。打率0割9分1厘ながら、プロ初安打・初打点も記録したのだった。

 ただ、井上も守る外野には近本光司、糸井嘉男、ジェリー・サンズといった実績のある選手に加え、新加入のメル・ロハス・ジュニアといった強力な顔触れが揃っている。この豪華外野陣による熾烈なレギュラー争いを勝ち抜くには、やはり自慢の打撃力にかかっている。長打力に加え、確実性も磨いて下克上を狙いたいところだ。

 石川と井上は共に右の大砲だが、次は高卒2年目の好打者を紹介しよう。横浜DeNAにドラ1で入団した森敬斗だ。昨年は2軍で58試合に出場し、打率2割1分、2本塁打、13打点だったが、10月27日の読売戦で1軍デビューを飾った。

 するといきなり初打席でレフトフェンス直撃の二塁打を放ち、ファンを驚かせたのである。結果的に1軍では8試合に出場して、12打数3安打の打率2割5分で、打点と本塁打は0に終わった。それでも左打席から鋭い打球を飛ばしたかと思えば、遠投も120メートル、走力も50メートル5・8秒と走攻守で高いポテンシャルを誇る森はまさにスター候補生といっても過言でない存在だ。今季、まさに“1番・ショート”を狙える逸材である。

 左の好打者で注目したい選手が、もう1人いる。東北楽天の黒川史陽だ。智弁和歌山時代に1年春から甲子園に5期連続出場を果たした左の中距離打者は昨年、春季キャンプを1軍で完走し、オープン戦も1軍帯同を果たすなど、首脳陣からの期待の高さを伺わせた。さらに2軍では57試合に出場し、打率2割9分7厘、6本塁打、31打点と好成績をマークすると、9月4日には1軍デビューを果たしている。

 いきなり“7番・セカンド”で先発出場すると、初打席でライトへ犠牲フライを放ち、プロ初打点を記録したのであった。結局、1軍では10試合に出場し、プロ初安打を含む14打数2安打で打率1割4分3厘、2打点、0本塁打という数字だったが、何より経験を積んだことは大きい。今季は一気に内野陣の一角のレギュラー奪取が期待される。

 ここまで紹介した8人は全員1軍の経験があるが、1軍未経験の中から1人選ぶとすれば、読売にドラ4で入団した高卒左腕・井上温大だろう。昨年はイースタン・リーグで9試合、30回を投げて1勝1敗、防御率4・80、18奪三振という成績だった。

 最大の持ち味はバランスの取れた、きれいなフォームから投げ込まれる最速146キロの直球と縦横2種類のスライダーのコンビネーションである。さらに持ち球の全球種のレベルも高く、制球力も安定しているから四球で崩れることがない。また、けん制やフィールディングなど、投球面以外の評価も高い。総合力で抜けていて、このままプロの身体が出来ていけば、かなりの大化けが期待できるそうだ。2年目の今年はまだ早いかもしれないが、伸びしろは高く、将来的には名投手になっている可能性大。今からチェックしておきたいところである。

 最後に、やはりこの選手にも触れておこう。千葉ロッテの最速163キロ右腕・佐々木朗希である。ルーキーイヤーだった昨季は主に1軍に帯同しながら調整したものの、2軍での登板もなかった。これは投手育成に定評がある吉井理人投手コーチの方針もあるのだろう。今季は、すでに1軍キャンプスタートが決定している。この1年間みっちりと鍛錬してきたその成果を、まずは1日も早く実戦のマウンドで発揮したいところだろう。

 以上、この10人の若手選手に注目してほしい。

上杉純也

デイリー新潮取材班編集

2021年2月2日掲載

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