「透析患者が運ばれるとドキッとする」 医師が語る「コロナになる人の特徴」と「対処法」
亡くなった人の大半は「持病がある高齢者」
新型コロナの感染が広がる中、自宅待機中の急変死も増えているが、日常的に何に気をつけるべきなのか。これまで日本で亡くなった5千人を超えるコロナ患者は、どんな基礎疾患を抱えていたのか。データから分析する。
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国立国際医療研究センターが昨年12月末まで、全国844施設の症例2万1329を調査したデータがある。それによれば、死亡した人の割合が最も高いのは腎機能障害で、5割に迫る。次に心疾患、脳血管障害が4割前後。続いて慢性肺疾患、がん、糖尿病、肝疾患までは4人に1人以上が亡くなっている。高血圧、高脂血症(動脈硬化)と続き、基礎疾患がない場合の死亡率は、高齢者を含め1割に満たない。
また、死亡者の平均年齢は80歳超とされ、国立社会保障・人口問題研究所のデータでも、1月11日までに死亡した4114人中、80歳以上だと確実にわかっている人が2110人と、半数を超える。亡くなった人の大半は持病がある高齢者ということになる。
「透析患者が運ばれてくるとドキッとする」
400人ほどのコロナ患者を診てきた浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師が、現場の実感を語る。
「腎機能障害は怖く、透析患者が運ばれてくるとドキッとします。水分制限しているから粘液もなくてウイルスがつきやすく、たいてい心臓や肺も悪くしているので一気に重症化する。やはり4割くらいの方が亡くなる印象です。心疾患や脳血管障害は、そもそも高齢者が抱えていることが多い。加齢の影響を除くと、怖いのは糖尿病。血糖値が高くなると白血球の機能が落ち、免疫が弱くなるのです。続いてがん患者。治っていればあまり心配はないですが、抗がん剤などで免疫が抑制されていると、ウイルスが増殖するのが速い。肺気腫なども、ほとんど機能していない肺でウイルスが増殖するので怖いです」
東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授の見方はどうだろうか。
「重度の腎機能障害がある方は、糖尿病や高血圧を併せ持っていることも多くて、感染すると血栓ができる確率が高い。加えて私の病院では、慢性肺疾患や心疾患がある方の重症化率と致死率も高い気がします。新型コロナの重症化には、サイトカインというたんぱく質のせいで血栓ができやすくなる現象が関係しています。腎機能障害や心疾患、脳血管障害の方は、高血圧や糖尿病、動脈硬化などを併発している場合が多く、血管が傷んでいて血栓ができやすいのです」
パルスオキシメーターで経過を観察
心配な人は、日常的にどう気をつければいいのか。矢野医師は、血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターの常備を勧める。
「私はこの数値を最重視します。コロナの場合、血液検査での白血球や炎症反応の多少より、96~100が正常値の酸素飽和度で、93になるほうが怖い。30歳未満で既往症がなければ自宅療養で心配ないですが、50歳を超えたらパルスオキシメーターをチェックしたい。95だと少し気になり、94ならすぐ入院、93は肺炎が疑われるのでCTを撮りたい。一方、熱があっても96なら安心です。年齢とこの数値を伝えれば、わかる人には急を要するかどうか伝わるはずです」
寺嶋教授が補って言う。
「新型コロナは酸素飽和度が低下しても、息苦しさを感じにくい特徴があるようです。91、90と低下しても普通に会話ができ、息苦しさを訴えない場合もあります。また酸素飽和度は1日のなかでも変化し、健康なら常時95以上ですが、トイレに行くなどしたあとに下がることがある。数値の回復にかかる時間が長くなっていくと要注意で、そのためにも1日に数回測って、自分の酸素飽和度の傾向をつかむことです」
そして、さらに加える。
「陽性だという連絡が保健所からきたら、持病や基礎疾患、現在の体調を正確に伝えること。CTを撮っていたり、酸素飽和度を測っていたりすれば、その内容も伝えます。自宅療養になっても、その時々の体調を正確に伝えることが重要で、急激に体調が悪化して緊急性が高いと判断したら救急車を呼ぶべきです」
安静にしたらダメ?
最後に矢野医師が、こんな注意をする。
「この病気は安静にしてはダメ。ウイルスが血管に侵入して内側の細胞を攻撃し、血栓が作られると、深部静脈血栓症、つまりエコノミークラス症候群になりやすいのです。自宅にいても足を動かしてください」
リスクがある人にとってはたしかに怖いが、日本医師会の中川俊男会長が言うような「未知」の病気では、すでにない。医療が当たり前に提供され、各人が気をつけるべきツボを押さえていれば、おかしな罰金を科したり、飲食店に塗炭の苦しみを背負わせたりする必要はないのである。