セブン店内に出現した巨大な「ボックス」は何? 変遷する「コンビニのスペース」事情

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ならば商品を増やせばいいのでは?

 ボックスを置くくらいなら、そのぶん棚を増やし、商品のバリエーションを増やせばいいのでは?と思うかもしれません。しかし、そう簡単な話ではないのです。

 現在、コンビニに置かれている商品の数は、1店舗あたり3000~3500品といわれています。これは、来店者数や売れ筋商品の傾向を絞りに絞って選ばれた、商品のラインナップ数なのです。仮に40種類のカップラーメンを扱う店舗で、50~60種類のカップ麺を置いたとしても、売り上げは40種類の時とそう変わらないはず。むしろスペース効率が悪化する場合がほとんどでしょう。となれば、既存の商品を増やす方向よりも、まったく別のサービスを導入する方が効果的であるわけです。

 そうした傾向に「ボックス」とは別のアプローチをしているのが、日用品の拡充です。昨年末、セブンは100円ショップ「ダイソー」の商品を置く実証実験を始めました。同様にローソンは、無印良品の取り扱いも始めました。それも、かつてファミマが無印を扱っていた頃にはなかった「ハンガー」など、普通のコンビニでは扱わないような商品です。ファミマはファミマで、オリジナルの衣料品PBブランドを立ち上げています。“商品を増やす”のであれば、このように、まったく新しい商品を店頭に置く方が、効果が期待できるわけです。

 そのほかにも、新しい「サービス」にスペースを割くコンビニも見受けられます。たとえばローソンは、介護相談窓口を設置した「ケアローソン」という店舗を全国に展開しています。こうした店舗では介護食や大人用のおむつなども置けますから、やはり新たなスペースの活用のかたちといえるでしょう。

 いまや、無人化コンビニの実証実験も始まっています。ゆくゆくはレジすらない店内レイアウトが当たり前になっていくかもしれません。そうして空いたスペースを、コンビニはどのように活用してくのでしょうか。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月28日掲載

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