菅野&浜辺「ウチカレ」、SNS上での評判は今ひとつ、北川悦吏子「脚本」のここが残念
日本テレビの連続ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!(ウチカレ)」(水曜午後10時)は菅野美穂(43)の4年ぶりの連ドラ主演作で、その一人娘役を売れっ子の浜辺美波(20)が演じている。豪華布陣。ところが視聴率が振るわない。大家・北川悦吏子さん(59)によるオリジナル脚本に理由があるのではないか(視聴率は「世帯」でビデオリサーチ調べ、関東地区)。
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「ウチカレ」の視聴率は第1話こそ10・3%で合格ラインの2桁を超えたが、第2話は8・8%。菅野と浜辺の豪華共演作であることを考えると、淋しいと言わざるを得ない。SNS上にも<役者の無駄遣い>といった言葉が並ぶ。
ドラマや映画など創作物は人によって評価が違うので、「ウチカレ」を面白いと思う人もいるに違いない。半面、現時点では多くの視聴者の支持を得られているとは言い難い。その理由はハートウォーミング・ラブコメディでありながら、脚本が難解だからではないか。
菅野が演じる母親はかつて売れっ子の恋愛小説家だった。浜辺扮するその娘はオタクであり、だから20歳になるまで彼氏が一度も出来ない。これがストーリーの初期設定。この時点で既に首を捻る人は少なくないだろう。
自他ともにオタクと認める人にも彼氏や彼女はいる。オタク限定の婚活サイトもあり、そこから誕生するカップルもいる。「オタク=異性と縁がない」という概念は大半の視聴者にはない。にもかかわらず、このドラマはオタクだと彼氏が出来ないと繰り返されるから、最初からストーリーに分かりにくい部分がある。
また、北川さんは漫画やアニメ、同人誌、コミケが好きな人をオタクと定義しているらしいが、それからして大半の視聴者とは認識が異なるはず。漫画やアニメを愛する人は無数にいる。日本はアニメ大国、漫画大国なのだから。どうやら北川さんのオタク観は世間のものと違うようだ。
ほかにも理解するのが難しいセリフがいくつかあった。第1話は早口のセリフがやたら多く、その分、間が極端なまでに少なかったのだが、分かりにくいセリフの1つも早口で語られた。
雑誌編集長役の有田哲平(49)から菅野へ連載打ち切りが伝えられるシーンでのこと。北川さんによる2018年度前期のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」にも登場した架空の和菓子店「たつや」の羊羹を手にしていた有田に対し、菅野はこう言った。
「お詫びの気持ちを練り込む、たつやの羊羹。その羊羹の重みが罪の深さと比例。お詫びの気持ちとグツグツと煮込まれた小豆…」
お詫びの際には「とらや」(本社・東京)の高級羊羹を持参するという一部ビジネス界にある暗黙のルールをパロディ化したものに違いなかった。とはいえ、どういう意味か理解できなかった視聴者も少なくなかったはずだ。
地方には、とらやの店舗が存在しない地域がいくつもあるからだ。そうでなくても学生や主婦らには通じないであろうパロディである。万一、「分かる人にだけ分かればいい」という考えが下地にあったのなら、首を捻らざるを得ない。
地方にも菅野と浜辺のドラマを楽しみにしている人はいる。第一、地上波のプライムタイムのドラマは一部の人が楽しめれば良いというものではないはずだ。
菅野の担当編集者役のふせえり(58)も第1話の早口セリフの中で気になる言葉を口にした。出版社を早期退職し、IKEAに転職し、店長になるのだが、理由をこう説明した。
「働いても働いても女は偉くなれないということが分かったので、そしてアホな年も下の男にこき使われるということが分かったので、早期退職しまして、自宅近くのIKEAに転職し、店長をやることになりました」
虚構であるドラマの世界のセリフは事実でなくても構わないが、この部分はわざわざ実在する外資のIKEAまで出してきたので、一定の真実性が求められる。実際にはどうなのだろう。日本企業で働く女性は、「アホな年も下の男にこき使われる」のだろうか。
男女雇用機会均等法の施行から34年が過ぎ、女性管理職割合は平均7・8%(2020年8月、帝国データバンク調べ、調査対象1万1732社)で、少しずつだが毎年増えている。なので、このセリフに違和感をおぼえた人もいるはずだ。
おそらく北川さんのメッセージの1つなのだろうが、唐突な気がした。実在の企業名まで入ったストレートなメッセージが織り込まれると、ハートフル・ラブ・コメディの妙味が損なわれる気がしてならなかった。
ストーリーにも気になる点があった。第1話で菅野と浜辺はともに東啓介(25)演じる整体師が好きになった。第2話以降で母娘の恋愛バトルが始まることを強く匂わせた。ところが、第2話の序盤で菅野はあっさりとあきらめた。
44歳なのに「50肩」と言われ、傷ついたのだ。その上、東の設定上の年齢が25歳であることを知り、熱が冷めた。
「あー短かった!たった3日の恋だった」(菅野)
ドラマには意外性も求められるが、それとは違った。拍子抜けと呼ぶべきものだった。第1話は一体、なんだったのか。
第2話では菅野が長年通う鯛焼き屋の主人に扮する中村雅俊(69)が、自室でジャニス・イアン(69)の「will you dance?」のレコードをかけ、1人でチークダンスを踊った。しばらくして映像は菅野や浜辺の姿に変わったものの、この曲は2分以上流れ、その間のセリフはほとんどなし。イメージ映像とも受け取れてしまうシーンだった。
この曲はTBSの珠玉ドラマ「岸辺のアルバム」(1977年)の主題歌。名曲とはいえ、どうして第1話では早口ゼリフを詰め込みながら、一転してセリフを省いたのか。おそらく意図して緩急をつけたのだろうが、アンバランスに感じられた。理解しがたいシーンだった。
歌手はベテランになると、コンサートを主催するプロモーターをよく泣かせる。過去の持ち歌を原曲通りに歌うことを嫌がるからである。観客は元のままの歌を聞きたいのだが、ベテラン歌手側はアレンジを加えたがる。
脚本家の世界も同じことが言える気がしてならない。北川さんもそうなのではないか。定石を踏めば、「愛していると言ってくれ」(TBS、1995年)のようなヒット作を簡単に書けてしまえるのに、規格外のものを書きたいように見える。
SNS上には<ウチカレは古い>という意見が多い。だが、むしろ新しいものを目指しているのが分かる。旧来のハートウォーミング・ラブコメディのストーリーやセリフとはまるで違うからだ。
ただし、新しいものが共感を得られるとは限らない。ベテラン歌手がコンサートで過去の曲にアレンジを加えて歌うと、多くのファンが落胆するのと同じ。脚本の場合も作風を旧来のものと違ったものにすると、賛否両論となりやすい。「半分、青い。」もそうだった。
ドラマや映画などの評価は人によって違う。これから先、どこまで「ウチカレ」を面白いと思う人を増やせるだろうか。