一夜の過ちが妻にバレて三畳の小部屋で寝起き… 46歳男性が語る「二世帯生活の苦悩」

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「お父さん、この人、先週末、ホテルにいたのよ」

 それでホテルへ行ってしまったというタカシさん。おそらくその女性は人肌が恋しかったのだろう。人は人肌でしか埋められない傷を負うことがある。

「彼女を抱いたまま朝まで一緒にいたんです。恋という感じではなかったけど、今、この人を離してはいけないと思った。彼女もそう思っていたんじゃないかな」

 初めての外泊だった。ふたりで朝食をとり、週末だったため、それぞれ家に帰った。この先の約束などしていないし、関係を続けるつもりはなかった。ただ、先輩としてできる限りのことはしてあげたいと思っていたという。

「帰宅して、妻には前の会社の後輩と飲んで、そいつの家に泊まってしまったと言い訳をしました。妻は『へえ、そうなの』と言ったきり。追求してこないのが逆に怖かったんですが、その場はしのげたと思っていました」

 数日後の祝日の夜、義父母の結婚記念日ということで家族で外食をした。帰宅後、リビングで二次会が始まり、タカシさんも義父とワインを飲んでいた。

「すると妻が急に言ったんです。『お父さん、この人、先週末、ホテルにいたのよ』と。思わずワインを吹き出しました。何を根拠にと思って妻を見ると、妻がプリントアウトした紙をひらひらさせていて、愕然としました」

 妻はタカシさんに黙って、いわゆる「浮気防止アプリ」から夫の行動を把握していたのだ。しかも、本人に気づかせないままスマホのカメラを起動させ、遠隔操作で写真を撮影することもできるもの。妻は女性の写真を撮影し、印刷して見せたのだ。

「場が凍りつきました。義父は『本当なのか』とひと言いい、私は『違います』と言うしかなかった。でも当然、妻は義父にすべて証拠を見せたでしょうね。その場には子どもたちもいたのに……」

 妻は翌日から何事もなかったかのようにふるまっている。子どもたちはタカシさんを避けるようになった。それからすぐ上の子の中学受験があり、子どもはなんとか合格してくれた。

「いつ、義父が会社を辞めろというのか、妻が家を出ていけというのかビクビクしながら暮らしています。でも妻はほとんど何も言わない。義父は何度も『どうなんだ』というから『誤解です。なんとか妻をなだめてもらえませんか』と頼んだんですが、『それはきみの仕事だろ』と突き放されて」

 それ以来、タカシさんは外で食事をしてから帰るようになった。食事は例のごとくお手伝いさんが作ってくれるのだが、いつしかタカシさんの分が用意されなくなったのだ。

「真綿で首を絞められるってこういう感じなんだろなと思います。二世帯住宅には、もともと小部屋があって、僕はずっとそこで寝泊まりしています。最初からそこが僕の部屋になる予定だったのかもしれません。三畳くらいの広さですよ」

 すべてをぶちこわす覚悟で妻と話し合おうと思ったこともあるが、妻は話し合いにすら応じなかった。家を出ていこうかとも思ったが、めったに話せないとはいえ、子どもたちと別に暮らすのは耐えがたい。

「たった1回の過ちだと本当のことを言えば許されたのか、それも今となってはわかりません。どうせ許されないと思いますし。このあと僕はどうすればいいのか、仕事での立場はどうなるのか。断崖絶壁に立たされたまま身動きがとれない状態が1年半、続いています」

 この先、どうすれば状況を変えることができるのか。タカシさんは何も考えずに、毎日、会社に行くしかないと思い始めている。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月27日掲載

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