格安の「自費PCR検査」って、どれくらい有効なのか? ウィルスの専門家に聞いた
結局は人
宮沢准教授によると、検体を採取する場合でも、検査を行う場合でも、熟練の技術と細心の注意が求められるのだ。
「疾患の診断のためにPCR検査を行う場合、非常に高い精度が求められます。特に今回は感染症法で規定されている指定感染症です。結果は患者、受診者に多大な影響を及ぼす極めて責任の重い診断となります。
通常はそのような感染症は複数の検査法で診断するのが普通です。今回はPCRが診断の唯一の基準になっています。PCRでの診断法しかない場合、研究者は複数の機関に調査を依頼することがよくあります。
全ての結果が一致すればOKですが、限界までの感度を追求すると結果がばらつくことも多いのです。高い精度を維持しているのは基本的に、問題解決能力の高い経験豊富なスタッフを抱えた、厳密な検査を行うための規定に沿った施設です。
コロナ禍における需要増を見込んで、慌てて自費検査をスタートさせたような機関や施設に、そうした人材や蓄積が存在するのかは疑問です」
全自動でも問題
最近はPCR検査の機械化、全自動化も進んでいる。これなら問題をクリアできるかと言えば、それも違うという。
「PCRの検査場所は、常に検査サンプル中へのウイルス由来の核酸(DNAやRNA)、PCR増幅DNA断片のコンタミネーション(汚染)のリスクに晒されています。
特に後者は細心の注意が必要です。新型コロナウイルスの場合、検査を行えば行うほど、コロナウイルスのPCR増殖DNA断片の汚染の危険が高まり、本来なら陰性であるはずの検体を汚染し、偽陽性にしてしまうことがあるのです。
全自動の機械によるPCR検査も最初は精度が保証されていますが、検査を行えば行うほど、偽陽性が増えていく可能性があります。コンタミによる偽陽性を出してしまったことに気がつかない検査所も多いのではないでしょうか」
高い精度が求められる研究の現場では、偽陽性が一度でも出た場合は、検査を一時的に中止し、何日もかけて徹底的に原因究明をするのだという。
「毎日検査に追われている現在、検査を中断することは不可能でしょう。自費PCR検査で、どこまで徹底しているのかわかりません。科学・医学的な見地からは、精度などに問題のある検査結果を出している機関や施設が存在する可能性は、私は否定できないのです」
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