格安の「自費PCR検査」って、どれくらい有効なのか? ウィルスの専門家に聞いた
「回答拒否」の医療機関や施設も
該当のページを閲覧してみると、都道府県別にエクセルとPDFが掲載されている。そこには施設の名前、住所、連絡先、検査費用といった基礎的な情報が載っている。
だが後の項目は専門用語が混じっていることもあり、どこで「精度」を判断するのか分からない。
厚労省に取材を申し込むと、「厚労省が精度の高低など、自費PCR検査を行う医療機関や施設を評価したりするような項目は、基本的にございません」と意外な答えが返ってきた。
「こうした情報を公式サイトで提供しているのは、『一体、どんなところでPCRの自費検査が行われているのか?』という疑問の声が少なくなかったからです。そこで全国でアンケート調査を行い、基本的な事項を一覧にしてまとめたに過ぎません」
厚労省がアンケート調査を行い、回答を機械的にまとめて掲載したということのようだ。興味深いことに、回答しなかった機関や施設もあったという。なぜ調査に協力しなかったのか、その理由のほうがむしろ知りたいという人もいるに違いない。
偽陽性と偽陰性
京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は「自費PCR検査の精度については、率直に申しまして、疑問を持っています」と語る。
「PCR検査は偽陽性と偽陰性を大前提として考える必要があります。人間のやることに完璧や完全はありません。一定の精度が確保されていると言われる行政検査でさえ偽陽性、偽陰性は起こりうるリスクです。
自費検査を行う医療機関や施設に国が定期的に立ち入り検査を行っていれば話は別ですが、検査態勢や精度などの実態が“ブラックボックス化”しているのは事実です。自費検査に正確性を求めるのが、そもそも無理な話なのです」
いわゆる“格安PCR検査”は、「自分で検体を採取し、検査だけを依頼する」というタイプが少なくない。こうした方法は、これまでに専門家が精度を疑問視したことがある。
テレビやインターネットでCMをご覧になった方もおられるだろう。自費検査を希望すると、自宅や待ち合わせ場所で検査キットが渡される。自分で唾液などを採取し、返送すると結果が出るというシステムだ。
BuzzFeed Japanが昨年11月26日に配信した記事「『誰にも知られず、こっそり』強調 民間PCR検査キット、使ってみた」によると、記者が唾液の採取に挑む場面がある。
《スポンジを口に入れると、思っていたほど簡単に唾液は出てこない》
自分で自分の検体を採取するのは、意外に難しそうなのだ。
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