「文在寅の逮捕・収監」は不可避 特赦されても罰金免除ナシ 畳の上で死ねない“四権の長”韓国大統領

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歴代大統領の末路

 李承晩の退陣後、許政(ホ・ジョン)国務総理が大統領を代行し、欠員だった副大統領を代行した尹潽善(ユン・ボソン)が第4代大統領に就任したが、就任翌年の61年5月に軍事クーデターが発生し、62年3月に辞任した。

 当時は議院内閣制で首相が実権を握っていた。

 尹潽善は実績がない代わりに退任後に起訴されることもなかったが、1976年に金大中らと行った政治活動で起訴された。

 尹潽善の辞任後、大統領代行を務めた朴正煕(パク・チョンヒ)が第5代から第9代まで、16年近く大統領を歴任した。

 朴正煕の最大の功績は、日韓国交回復と国家建築だ。

 朴正煕は就任2年後の1965年6月22日に日韓基本条約を締結し、統治時代の個人補償金や発展途上国支援金など、有償無償合わせて3億ドルと民間借款3億ドルを手に入れた。

 当時の日本の外貨準備額は18億ドル、韓国の国家予算は3・5億ドルだった。

 朴正煕は日本から受け取った個人補償金の5%余りを旧日本軍人などに支給し、約95%をインフラ整備や企業投資に流用。京釜高速道路、ソウル地下鉄、農村の現代化、大規模重化学工業の建設と育成、山林緑化事業、食糧の自給自足など近代化政策を推進した。

 4期目の1974年に妻の陸英修(ユク・ヨンス)が朴正熙大統領を狙った銃弾に当たって死亡。

 以後、娘の朴槿恵がファーストレディを代行したが、朴正煕も5期目の1979年に暗殺された。

 暗殺事件後に大統領代行を務めた崔圭夏(チェ・ギュハ)が第10代大統領に就任した。

 崔圭夏は韓国歴代大統領のなかで最も影が薄いが、本人・家族とも実刑判決を受けていない唯1人の大統領経験者である。

 第11・12代の全斗煥と第13代の盧泰愚は不正蓄財や民主化を求めた光州事件弾圧の罪で退任後に逮捕・起訴され、全斗煥は死刑と追徴金2259億5000万ウォン、盧泰愚は懲役17年、追徴金2688億ウォンの実刑が下された。

 第14代の金泳三は次男の金賢哲(キム・ヒョンチョル)が斡旋収賄で懲役2年、15代の金大中は3人の息子が企業から金を集めて有罪となった。

 第16代の盧武鉉は在任中に弾劾で2か月余り職務権限が停止され、退任後は兄と妻が収賄で取り調べを受けた。

 盧武鉉自身は収賄の疑いで訴追を受ける直前に自殺している。

蓄財は必要?

 第17代の李明博は収賄や横領などの罪に問われ、20年10月29日、最高裁で懲役17年、罰金130億ウォン、追徴金約57億8000万ウォンの実刑が確定した。

 李明博が大統領に就任したときの初任給は1650万ウォンで、5年間の報酬はおよそ10億ウォン。罰金と追徴金は大統領報酬の19倍に相当する。

 朴槿恵の場合だと、在職期間中に受け取った報酬は8億ウォン余りで、27倍の罰金と追徴金の支払いを命じる判決が下されたことになる。

 1995年に収監された盧泰愚と96年に死刑判決を受けた全斗煥は、金泳三政権下の97年、収監から2年余りで特赦により釈放されたが、罰金と追徴金は免除されない。

 2013年にいわゆる「全斗煥追徴法」が成立し、全斗煥は滞納が続いていた追徴金の未納分1672億ウォンを一族が完済すると発表。盧泰愚も同様に、追徴金の未納分を親族が払うことを公にした。

 朴槿恵前大統領は17年から4年間、拘置所に収監されており、特赦論が浮上している。

 特赦は大統領固有の権限で文在寅次第だが、文在寅が特赦しなくても来年の大統領選で保守系政権が誕生すれば釈放されるだろう。

 李明博は最高裁の確定判決まで保釈の身で収監期間は1年余りのため、時間がかかるかもしれないが、いずれ特赦を受ける可能性が高い。

 ただし、身柄は釈放されても罰金と追徴金は逃れられない。

 なぜ大統領はいつも不幸な末路を辿るのか。

 韓国の大統領は、法律上、行政権と軍事権を有するが、立法や司法にも関与し、事実上は四権の長として絶対的な権限を有している。

 これが仇となるのだ。

 韓国は地縁、血縁のつながりが深く、利権を求める人が大統領の周りに集まり、また政治的な報復を畏れて“献金”する。

 そのため腐敗が生まれやすいというわけだ。

 文在寅大統領は、退任後に逮捕・収監されるだろうと保守層を中心に囁かれている。

 朴槿恵の特赦を認めれば、保守政権下でも特赦を受けられるかもしれないが、追徴金の支払いに備えた蓄財に励んでいるかは定かではない。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月27日掲載

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