急増する「死後離婚」「配偶者居住権」の落とし穴 親族トラブルの実例を紹介
ひとり遺されてからの“設計図”をいかに描くか。それは人生最後の課題である。先般、およそ40年ぶりに相続法が改正され、配偶者に新たな権利が認められた。一方で「死後離婚」を選ぶ人も増えているが、こうした制度はまさしく諸刃の剣。その実例をご紹介する。
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連れ合いに先立たれた時、あなたの胸中にはどんな思いが去来するだろうか。喜怒哀楽をともにした時間が長ければその分、感慨も深いのは言うまでもない。そして、故人の想い出に浸りながらも、これから一人で向き合わざるを得ない日々の暮らしに、さまざま心を砕くことになるだろう。
2018年の7月、相続法が38年ぶりに大きく改正された。新設された項目は一昨年1月から順次施行されており、その目玉の一つが、夫や妻の死後、配偶者が他の相続人から家を追われることなく住み続ける権利を保障する「配偶者居住権」というものである。
相続問題に詳しい法律事務所アルシエンの武内優宏弁護士が言う。
「配偶者居住権は2020年の4月から施行されています。その背景には、日本人の平均寿命が延び、セカンドライフが長くなったことがあるでしょう。現在、日本人女性の平均寿命は男性よりも6歳長く、夫が亡くなった後も妻が一人で長く生きていかなければならない時代です。そうした人たちが“終の棲家”を奪われず、老後の資金も確保できるようにという理念から創設されたのです」
もう一つのきっかけとして、2013年に最高裁が下した「婚外子の相続分を嫡出子の相続分と同等にする」という判決が挙げられる。これにより婚外子の立場が大きく向上した一方、配偶者の立場が弱まるのではという懸念が生じた。実子のみならず婚外子との相続争いにも発展しかねず、そんな状況下で作られた権利でもあるのだ。
武内弁護士が続けて、
「まず、短期居住権と長期居住権の2種類があり、前者は相続が発生してから最低6カ月間は、亡くなった被相続人や他の相続人の意思とは関係なく、ほぼ無条件で配偶者が自宅に住み続けることができます。ただし他人に貸与はできず、居住中の固定資産税などは所有者に納税義務がありますが、配偶者は建物の必要費を負担することとされており、その分を所有者が請求するという流れになります」
もう一つの長期居住権は、
「相続の対象となる自宅建物に設けることができます。つまり自宅の権利を、居住権と所有権の二つに分けるのです。所有権は妻以外の相続人が取得し、居住権は妻が取得することで、妻は終身、建物に住み続けられます。また他人に貸すこともでき、短期居住権と違って登記もできるので、たとえ建物の所有権が第三者に渡っても居住権を主張することができるのです」(同)
この「長期居住権」を得るには、配偶者が亡くなった時点でその住居に住んでいることが条件で、被相続人が遺言に残すか、または相続人全員による遺産分割協議での合意が必要。もし合意に至らなければ、家庭裁判所で認めてもらうことも可能である。
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