緊急事態宣言は「発出?」「発令?」それとも「出す?」 それぞれに深い意味がある
緊急事態宣言は「発出」されるものなのか、それとも「発令」? 意識していないと気づかないが、実は政府、地方自治体、メディアによって使い方が割れている。中には「出す」という言葉をあえて使う新聞社も。国会で審議入りする「新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案」が成立したら統一される、なんて声もあがっているが……。
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政府は「発出」。そのワケは……
現在、政府が公式に使っている言葉は「発出」である。菅義偉首相は、1月7日の会見で「前回、緊急事態宣言を『発出』した時は……」と言い、18日の施政方針演説でも、「今回、緊急事態宣言を『発出』しました」と語った。内閣官房や首相官邸ホームページにも「緊急事態宣言の発出」と載っている。初めて宣言を発令した安倍晋三前首相も「発出」を使っていた。
だが、「発出」なんて言葉、使ったことも聞いたことがない人がほとんどであろう。ある校閲者が解説する。
「『日本国語大辞典』で調べると、『出発』『出現』『発疹が出る』の意になっています。ただ、用例では『訓令は海軍大臣から発出された』『勅命の発出』とあるので、役所言葉として使われてきた実績はあるようです。元の漢語である『発する』『出す』『発行』の意味に、重々しさを加える時などに使われてきたのでしょう」
一方の「発令」はどちらかと言えば、馴染みのある言葉だ。
「気象警報や避難勧告などが出される際に使われてきましたからね。公的機関が法令・辞令・指示などを発布・発表する意であり、強弱はあるものの命令の意を含んでいます」(同)
では、なぜ政府は国民に向かって、聞き慣れぬ「発出」を使い続けるのだろうか。政治部記者は、「発令」に含まれる「命令の意」に理由があると説明する。
「現在の緊急事態宣言では、飲食店の時短営業や外出自粛、テレワークなどを“要請”しているわけで、“命令”しているわけではありません。あくまで“お願い”ベース。さらに言うと、宣言に基づいて実際に要請や指示をするのは知事であり、国ではない。つまり、『発出』を使うことで少しでも国民に対して命令調を和らげたいのです」
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