車両の“顔”を形作る「連結器」が、鉄道によって違うのはなぜ?
「相互乗り入れ」に関する問題
いままで説明したとおり、大都市の電車では密着連結器と密着式自動連結器とが入り混じって使用されている。
同じ路線を走っていない限り特に問題はないが、お互いに乗り入れを始めるとなると問題が起きてしまう。
というのも、電車が故障などで立ち往生した際に他の電車と連結して救出してもらうには連結器がそろっていないと困るからだ。
2013(平成25)年3月16日、東急電鉄東横線と東京メトロ副都心線とが相互直通運転を開始した際にもまさにこの問題が発生した。
東横線用の電車が密着式自動連結器、副都心線用の電車が密着連結器をそれぞれ装着しているからだ。
副都心線では東横線との乗り入れを始める前にすでに直通運転を行っていた東武鉄道東上線用、西武鉄道池袋線用の電車も全て密着式連結器を取り付けていた。
そこで、東京メトロは東急電鉄に対し、自社の副都心線に乗り入れる電車の連結器を密着連結器に取り替えてもらうよう依頼したという。
その際に、東京メトロの担当者は東武鉄道や西武鉄道の担当者からも東急電鉄に頼んでもらうよう声をかけたそうだ。
ところが、東急電鉄は電車の連結器を交換するのが大変と、東京メトロの申し出を断る。
東武鉄道、西武鉄道の両社は「東急さんがそうおっしゃるのなら構いません」とあっさり折れてしまい、東京メトロは東急電鉄の言い分を受け入れることとなった。
その代わり、非常時用として密着連結器と密着式自動連結器とを連結するためのアダプターを装備することとなり、現在に至っている――。
こう記すとアダプターを搭載しているのは東横線用の電車だと思われるかもしれないが、そうではない。
密着連結器を装着した東京メトロ、東武鉄道、西武鉄道の電車が搭載している。
いままでの連結器の説明でおわかりの方も多いかもしれないが、構造上、密着式自動連結器はアダプターを固定できないからだ。
アダプターの先端には自動連結器のナックルが付いていて、後端にある密着連結器用の突起を密着連結器に差し込む構造となっている。
したがって、密着式自動連結器には無理でも密着連結器にアダプターを取り付けることは可能なのだ。
東急電鉄にも事情はあるものの、見ようによってはわがままにも受け取ることができるのが興味深い。
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