車両の“顔”を形作る「連結器」が、鉄道によって違うのはなぜ?

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ベーシックな「密着連結器」

 連結器と聞いてピンとくる方は少ないだろうが、「すべての車両の、前から見て下のほうの真ん中について」いて、「鉄道の車両と車両を結ぶもの」と言うと想像できるだろうか。この連結器、鉄道によって違うタイプのものが使われている。車両の“顔”を形作る一部であり、その用途と合わせてとても大事な役割を担うこの部品のマニアックな世界へ、鉄道ジャーナリストがいざなう。

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 車両の前面を見渡せる場所に行くと、前面の下側中央から突き出した装置が目に入るはずだ。

 この装置が車両同士をつなぐ連結器である。

 ほぼすべての車両の連結器はこの位置にあるが、新幹線や特急用の車両など、なかにはカバーで覆われて見えない車両も多い。

 それから、湘南モノレールや千葉都市モノレールのようにぶら下がって走るモノレールの車両は、反対に前面の上側中央に連結器が取り付けられている。

 多くの人たちの目に留まった連結器は、恐らく箱のような形をしていたのではないだろうか。

 もう少し細かく言うと、箱形状の連結器の向かって左側には四角錐の突起があり、その右側には正方形の穴があるはずだ。

 このような連結器を「密着連結器」という。

 連結したときにすき間がないので、「車両が発進したり停止したりする際に衝撃がほとんど生じない」という特徴から名付けられた。

「密着式自動連結器」と「自動連結器」

 連結するには、四角錐の突起を連結相手の正方形の穴に収めればよい。

 すると突起内部にある半円形状のロックがお互いにかみ合い、そのまま固定されて連結される。

 切り離す際にはレバーを引くと半円形状のロックが解除されるので、その状態で車両を動かせばよい。

 密着連結器は多くの車両の先頭車で見ることができ、特に大都市ではJR旅客会社のすべての電車、それから大手私鉄や地下鉄でも多くの電車に取り付けられている。

 先頭車を眺めると、大手私鉄や地下鉄のうち密着連結器が全面的に採用されているのは、西武鉄道、小田急電鉄、京浜急行電鉄、南海電気鉄道、阪神電気鉄道、札幌・仙台・神戸・福岡各市の地下鉄だ。

 一部の電車に密着連結器が装着されているのは東武鉄道、京王電鉄、京阪電気鉄道、阪急電鉄、東京メトロ、都営地下鉄、京都市の地下鉄、大阪メトロとなる。

 一方で京成電鉄、東急電鉄、相模鉄道、名古屋鉄道、名古屋市営地下鉄の電車には密着連結器が装着されていない。

 では、大手私鉄や地下鉄の一部の電車に取り付けられている密着連結器以外の連結器とは何だろうか。

 多くは「密着式自動連結器」で、一部に「自動連結器」が取り付けられている。

 どちらも基本的なつくりは同じだ。

 前から見ると拳骨のような形をしており、連結するにはまさにナックルと言って指の関節のような部分のロックをまずは解除する。

 続いてナックル同士を突き当てるとお互いに握り合う形となり、自動的にロックされて連結は完了だ。切り離す際にはロックを解除すればよい。

 密着式自動連結器と自動連結器とはどこが異なるかというと、連結したときのすき間、そして連結器本体が車体とは独立して左右に加えて上下に動くかどうかという点である。

 すき間が生じず、上下に動くのが密着式自動連結器、約2cmほどのすき間が生じて上下に動かないのが自動連結器だ。

 そうは言っても密着式自動連結器と自動連結器とはお互いに連結できる。

 けれども密着式自動連結器や自動連結器は密着連結器とは連結できない。

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