菅総理と自民党との間で軋轢、官邸も機能不全に 「ポスト菅」候補は
立役者・二階幹事長まで…
なかでも懸念されているのは、自民党国対との“かすがい”となるべき、坂井学官房副長官の存在だ。坂井氏は菅総理を慕う無派閥議員グループ「ガネーシャの会」の中心人物だが、自民党関係者が言うには、
「医療費負担の件をはじめ、坂井さんが橋渡し役として機能していないと批判されている。本人は飲み会で“オレは菅総理の右腕だ”と豪語していたようですが、国対幹部は“官邸から逐一報告が上がってこない。坂井はもっと汗をかかないとダメだ”とこぼしていました。坂井氏や総理秘書官をはじめ、いまの官邸スタッフは、菅総理に従順で決して裏切らないタイプ。ただ、正直なところ、それだけが取り柄の人間がほとんどなのです」
官邸の要となる政務担当総理秘書官は、39歳の元菅事務所スタッフ・新田章文氏を抜擢した菅総理。しかし、“若すぎて官邸を仕切れていない”との批判を受けて、今年の元日に電撃解任。財務省出身の寺岡光博氏が後任となった。しかし、就任からわずか3カ月半という異例の交代劇に官邸内には激震が走り、機能不全による混乱が浮き彫りとなった。
政治部記者によると、
「寺岡氏は上司にも本音をぶつけるタイプで、政策の統括や総理会見の原稿チェックまで任されています。とはいえ、安倍前総理と今井尚哉内閣参与のように、菅総理と一心同体とは言えない。安倍前総理は今井氏に政局や解散のタイミングまで相談していましたが、菅総理は寺岡氏や最側近とされる和泉洋人総理補佐官に対してもそこまで腹を割っていません」
現在の総理秘書官は、寺岡氏を含め7人中6人を“菅官房長官”時代の元秘書官が占める。とはいえ、
「官房長官秘書官は日々の定例会見で記者からの質問にどう対応するかといったいわば受け身の仕事がメイン。一方、総理秘書官は、国家的な戦略について主体的に提案することが求められますが、いまの官邸スタッフには荷が重い。“菅さんは話を聞いてくれないし、支持率も右肩下がり。この政権は厳しいかもしれない”と嘆く秘書官まで現れる始末です」(同)
党との軋轢に、官邸内の不協和音まで重なれば、吹き始めた“菅おろし”が猛威を振るうのは時間の問題。
「注目は4月に予定される衆院北海道2区と、参院長野選挙区のW補選です。下村博文政調会長は今月5日のBS番組で“自民党が両方負けると政局になる”“補選に合わせて解散総選挙もあるかもしれない”と発言しましたが、明らかに菅おろしに連なる動き。下村氏本人は次の総裁選に出る気満々ですからね。下村ごとき小物に言われたくないということか、この発言に菅総理は激怒していますが、W補選に負ければ菅総理の求心力が低下し、党内から“このままでは選挙を戦えない”という声が止まなくなる」(同)
衆院議員の任期は10月21日までだが、今年は7月の都議選に加え、東京五輪・パラリンピックも控えている。コロナ次第ではあるものの、解散総選挙に打って出るのであれば、4月のW補選と同日か、9月の自民党総裁選の前後くらいしかタイミングがない。
では、ポスト菅として、誰を解散総選挙の顔に据えるのか。鈴木氏が続ける。
「河野太郎行革担当相は菅総理にポストをもらっているため総裁選には出馬しづらい。一方で、安倍・麻生のラインが推すとなれば、岸田文雄元外相以外にありません。下村氏と河野氏を説得して、挙党一致で岸田路線を固めていくはずです。また、気になるのは菅政権誕生の立役者・二階俊博幹事長の動きです。菅おろしが本格化すれば、いち早く菅総理に退陣を迫り、選挙に勝てる候補者の擁立に動くのではないか。具体的には石破茂氏や野田聖子氏です」
先のメルケル首相やアーダーン首相といった女性指導者が評価を高めていることもあり、
「“初の女性総理”という看板はコロナ禍でも話題を呼ぶ。“野田総理”が誕生すれば支持率の7割回復も絵空事ではありません」(同)
アフターコロナの前に“アフター菅”が囁かれるのが永田町の怖さ。寒風吹き荒ぶ季節に菅おろしは激しさを増すばかりだ。
[2/2ページ]