妻の居ぬ間に、女性を自宅に招いたら… “不倫の掟”を破った43歳男性が語る修羅場
予見していた妻
一昨年の夏のことだ。妻のシズカさんが、子どもたちを連れて2週間ほど実家に帰りたいんだけど、と言い出した。
「妻の実家は遠いので、毎年1週間くらいは、妻たち3人で行っていました。だけど一昨年は、義父が体調を崩して入退院を繰り返していたので、妻は少し長めにいてあげたかったみたいですね。僕も後半には妻の実家に行くよと言って送り出しました」
そしてここで彼に「魔が差す」のである。いつもラブホテルで時間を制限して会っているミエコさんと自宅で過ごそうと思ったのだ。彼は有頂天になった。
「彼女は最初、気が進まなかったみたいですが、僕が何日でもいていいんだよ、一緒に暮らしてみようよと口説いた。あのときは本当に彼女と生活がしたかったんですよね。このチャンスを逃したらもう二度とそんな機会はないから」
休暇の後半、彼は妻の実家に行かなくてもいいと思っていた。仕事が忙しいといえば文句は言われないはずだ。妻のいない2週間のうち、前半5日間、休みをとった。ミエコさんは4日間の休みをとった。部署が違うので怪しまれることもなかった。
「妻たちが帰った2日後、ミエコがキャリーバッグを引いてやってきました。あとはふたりでこもって楽しむだけ。夜になると子どもたちからLINEやテレビ電話が来ましたが、『電池がなくなっちゃったよ』とか『明日は朝から会議なんだ』とか言って10分くらいですませました。ミエコとの大事な4日間を邪魔されたくなかったですから」
ふたりで夢のような日々を過ごし、明日はミエコさんが帰るという晩、一緒に食事を作って食べながらソファでいちゃいちゃしていると、突然、玄関の鍵が開く音がした。
「チェーンをかけていたので開かなかったんでしょう、『あなた、いるの?』という妻の声が聞こえました。その日は携帯を切っていたんですよね。最後の晩を邪魔されたくなくて。だから妻の声を聞いて焦りました」
友だちが来ていたと言い訳ができるかもしれない、とにかくミエコと妻を会わせてはいけない。とっさにそう思ったショウジさんは、半裸のミエコさんにベランダに出てもらった。彼女のキャリーバッグと靴はベランダに放り出した。彼女のものと思われるものをばんばんベランダに放り、玄関を開けた。
「『どうしたのよ』と妻はリビングに入ってきました。リビングのテーブルの上にあった料理は、皿ごとゴミ袋に入れてこれもベランダに出しておいた。それでも誰かいた感じというのは消せないものですね。『誰かいたの』と妻が言うので、今日は休みをとってひとりで飲んだくれていたんだよと冗談交じりに言ったんですが、妻の顔は笑っていなかった。妻は腕組みをしてリビングを歩き回り、寝室へ。そこはミエコと毎日寝ていたので、シーツなどは乱れたまま。妻はそれを見ても黙っていました」
そしていきなり窓を開けたのだ。ベランダにはミエコさんがうずくまっていた。周りにはさまざまなものが散乱している。
「もうこうなったらどうしようもない。説明するから彼女は帰してやってくれと妻に頼みました。ミエコはうつむいたまま部屋に入ってきました。ベランダで身支度は調えていたようで、小さな声で『すみません』と言ったんです。すると妻は彼女を後ろから突き飛ばし、『ふざけるんじゃないわよ、何やってんのよ、人の家で』と叫びました」
彼は妻を止めた。ミエコさんは走り出て行ったという。
その後、当然のことながら彼は妻からひどく責められた。あれほど泣いたり叫んだり取り乱す妻を初めてみたという。妻はその休暇期間に必ず何かあると予見していたようだ。不倫は妻に勘づかれていたのだ。そして彼は追い出された。
「会社と自宅の中間点に、小さな古いアパートを借りました。妻は子どもたちに『お父さんは単身赴任だ』と言っている。だから月に1回の週末だけ帰れるんです。妻は離婚したいけど今はしないと言っていて。だけど僕とはほとんど会話してくれません」
ミエコさんとはときどき会社で顔を合わせるが、ふたりで会うことはない。今もミエコさんにはすまないことをしたと思っていると、ショウジさんは目を伏せた。
「もっと子どもたちに会いたいし、自宅に戻りたい。シズカにも悪いことをしたから、どんな償いでもする。そう言っているのですが、妻は許してくれません。それでも上の子はしょっちゅう妻の携帯からメッセージをくれるんです。『パパ、元気にしてる?』って。それを見ると泣けてきます」
自分が蒔いた種である。自業自得。わかってはいるけれどつらいんです。彼は唇を噛みしめ、眉間に深いシワを寄せた。これほどまでに苦悶の表情を見せる男性はめったにいない。魔が差した時間は、ないことにはできないだろう。なんとかそのうち妻の怒りが解けてくれたらいいのに。そう願うしかなかった。
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