「慰安婦訴訟」で日本に賠償命令でも「文在寅」が沈黙せざるをえない理由
今月8日、12人の元慰安婦らが日本政府を提訴した賠償請求訴訟で、ソウル中央地裁が1人当たり1億ウォン(約950万円)の支払いを命じる判決を下した。
この判決で思い起こすのは、元徴用工やその遺族らが起こした賠償請求だろう。1965年の日韓請求権協定を無視し、2018年には、韓国の最高裁にあたる大法院が賠償命令を下したのだ。
「今回の訴訟では日本政府が裁判に応じていないため、一審で判決は確定するとみられます。ただし、徴用工訴訟で被告となった企業と異なり、日本政府が韓国に有する資産は大使館にあるものくらい。今回は、差し押さえは難しいでしょう」(在韓ジャーナリスト)
それでも“国家は他国の裁判権に服さない”とする国際法の大原則を無視した韓国に、日本政府は猛抗議。
しかし、問題は“国際法の無視”だけではない。
「実は、15年の日韓合意によって設立された財団から、すでに30名以上の元慰安婦が1億ウォンずつを受け取っている。今回の原告の中にも、財団から支払いを受けた元慰安婦のハルモニ(おばあさん)が6名含まれていたといいます。つまり二重取りの形ですが、判決文はわざわざ“原告らの請求権は、65年の日韓請求権協定や15年の慰安婦合意に含まれない”と言い添えたのです」(同)
つまり、協定を結ぼうが、カネを支払おうが、慰安婦問題は終わらないと、裁判所がお墨付きを与えたのだ。
一方で、解せないのは文在寅大統領(67)の反応である。判決が出た8日には沈黙を決め込み、代わりに外交部から“15年の日韓合意は両国政府の公式合意である”と火消しに走るかのような声明を出してみせた。
これについて、龍谷大学の李相哲教授は、
「今回の原告勝訴は、昨今の韓国司法の雰囲気と傾向をみれば予想できたことです。文在寅政権のもと、韓国の憲法裁判所の裁判官は全員が左派となり、大法院もほとんどが左派になってしまいましたから。この判決は文大統領自らが蒔いた種といえますが、日韓関係や世論を睨み、様子見せざるを得ないのでしょう」
もっとも、先のジャーナリストは、
「韓国の世論と慰安婦問題との間には、すでに隙間風が吹いています。『正義記憶連帯』による不正や、反日国会議員のレクサス所有、チョ國元法相の妻が反日不買運動で売り上げを伸ばした韓国企業の株を取得していた問題などで“反日”の化けの皮は剥がれ始めている。文大統領は自分で自分の首を絞めつつあるのです」
今回とは別に、20人の元慰安婦らによる賠償請求も行われている韓国。国際法も世論も無視して、まだ暴走を続けるおつもりか。