博多でトランプを支援する「Jアノン」 デモ密着で見えた正体
なぜか子どもの参加者が……?
いっぽう、奇妙な特徴もあった。デモ隊は50~60代くらいの質素な身なりの人たちが比較的多かったが、幼児や小中学生と見られる子どもも合計20人程度見られたのだ。
彼らは揃ってやる気がなさそうで、退屈な学校行事をこなすときのような表情でテクテク歩いている。
子どものそばを歩く母親の姿も印象的だった。
彼女らは令和時代の日本の30代のママとしては奇異に覚えるほど、化粧っ気やおしゃれな雰囲気が極端に薄かった。「色気」をまったく感じなかったのだ。
子育てにともなう生活上の疲れとは別種の、なにかに強く疲弊しているような独特の覇気の無さが印象的な人たちだった。
ヤル気満々の人と、退屈そうな子どもと、生気を抜かれたような母親が、同じデモのなかでともに歩みを進めているのが、福岡のトランプ支援デモなのである。
ちなみに、この日のデモの主催者は「日本の自由と平和を守る会 福岡」である。協賛しているのは、過去にも東京などで何度か同様の活動に携わっている「トランプ米大統領再選支持集会・デモ実行委員会」という組織だ。
いずれも耳慣れない団体だが、両面カラー印刷のビラと、多数の星条旗やプラカードを準備し、デモ隊を梯団に分けたりハイレベルなコールをおこなったりと、「デモ慣れ」を感じさせる謎の集団である。
また、彼らはネット右翼・保守系の政治主張を掲げているとはいえ、往年の「行動する保守」のデモや、ゼロ年代末に流行した三民族連帯系のデモ(日本の右派が主導したチベット・ウイグル・南モンゴルなど中国国内の少数民族の支援デモ)などとは肌感覚が違うように思えた。
すなわち、ドロドロしたヘイト系の主張がまったくなく、日本国内の左翼勢力への批判も比較的弱い。特に朝鮮半島への攻撃的な文言は一切見られなかった。
統一教会の分派組織と多数のメンバーの名が重複
「福岡のデモについて、フェイスブックの公式ページで代表者として公開された人物A氏の電話番号を調べると、『日本サンクチュアリ協会』という新宗教の福岡県内の教会の代表者である人物の番号と一致します」
カルト宗教問題に詳しい『やや日刊カルト新聞』被告人兼総裁のジャーナリスト、藤倉善郎氏はこう解説する。
なお、このA氏は福岡デモ前の集会で「日本の自由と平和を守る会 福岡」の肩書でマイクを握り、演説をおこなっていた。
「また、福岡のデモで司会とコーラーをおこなっていた人物と同姓同名の女性が千葉県内にある日本サンクチュアリ協会の教会施設の代表であることも確認されています」(藤倉氏)
さらに藤倉氏によれば、11月12日に官邸前でトランプ支持の街宣活動をおこなっていた「日米同盟強化有志連合」や「自由と人権を守る日米韓協議会」も、それぞれ日本サンクチュアリ協会とのメンバーの重複がみられるという(これらの組織名は福岡の集会で配られたビラ内でも登場していた)。
なお、日本サンクチュアリ協会(正式名称:世界平和統一聖殿日本本部)は、反共保守系の政治主張と強引な資金集めで知られる韓国系新宗教「統一教会」の分派である新宗教団体だ。
彼らは統一教会の創始者である文鮮明の息子・文亨進の系統の教団で、アメリカのペンシルベニア州に拠点を置き、政治的にはトランプ政権の支持を明確に打ち出していることで知られている(『クーリエ・ジャポン』の「合同結婚式には小銃を持参せよ─統一教会、文鮮明の息子は語りかける」という記事が参考になる)。日本サンクチュアリ協会はその傘下組織だ。
なお、出発前集会で司会を務めていた女性は、コロナ禍にもかかわらず、トランプを支持するため3ヶ月にわたりアメリカの「ペンシルベニアに渡った」とスピーチしていた。
仮に彼女が千葉県内にあるサンクチュアリ施設の代表者と同一人物であるとすれば、この訪米も同州に拠点を置く米国サンクチュアリ協会のツテをたどったものだったのかもしれない。
福岡デモにおいて、主催者側から妙にデモ慣れした気配が感じられるいっぽう、(やる気がない)子どもの参加者や疲弊した雰囲気の母親の参加者がいたことも、彼らがみな統一教会系の新宗教団体の信者であるためだと考えれば腑に落ちる部分がある。
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