「二階俊博」を権力者にした“気遣い伝説” 視察に美女を手配、お土産の配り方も一流
超速攻の「陳情さばき」
そしてもうひとつの二階の資質は、県議時代から培ってきた類まれなあの能力だった。
「ある時、経産省管轄の陳情を二階先生のところに持っていったら、『じゃあ、経産省の役人を紹介するから』と、すぐに秘書さんを呼び出して、その役人と電話をつないでくれました」
「4年ぶり2度目不倫」として知られる元二階派衆院議員の宮崎謙介。宮崎が初当選した2012年、二階は志帥会会長に就任し、名実ともに二階派が誕生する。
「そして、『今、うちの派閥の若手で宮崎先生という方がこちらにいらしてるんですが、相談案件があるので話を聞いてやってくれませんか。では、後ほど本人の事務所から連絡させますので、よろしく』と。あっという間に話をつけてくれたんです」
先輩議員に陳情の相談をしても適当にあしらわれることの多かった宮崎は、この派閥の領袖の対応に言い知れぬ感動を覚える。
また宮崎は、「佐藤昭への送り届け」を想起させる「物」による気遣いも体験している。
「毎週木曜日の昼に開かれる派閥総会では、普段のお弁当に加えて、何かおめでたいことがあると赤飯がプラスして出されるんです。私が(金子恵美との)結婚発表をした後の総会でも赤飯を出していただきました。二階さんが総会直前に指示し、用意する派閥の事務局長は相当焦ったそうです。和歌山名産のちりめんじゃこやあんぽ柿も、よくいただきました」
自民党のある参院議員秘書も、「二階の物」にやられた記憶を持つ。
「うちの議員のお供で、議員会館の二階さんの部屋に行ったら、その帰りしな、二階さんがうちの議員に箱に入った和歌山産のミカンをくれたんです。すると、二階さんが『ほら、もう1個あるから持って帰って』と言う……。うちの議員が戸惑っていると、二階さんは『一緒に来ている人がいるでしょ』と。秘書の私にまでお土産をもたせてくれたんです」
活魚、ちりめんじゃこ、あんぽ柿にミカン……。
こうした気遣いに引き寄せられ、「来る者は拒まず」の二階派に次々と議員は参集。二階は「数は力」を体現していった。
鶏卵大手「アキタフーズ」疑惑の吉川貴盛、西川公也の元農水相コンビ。
公選法違反で逮捕された参院議員の河井案里。
IR疑獄の衆院議員・秋元司。
そして4年ぶり2度目の宮崎……。
二階の土産物のレパートリーと遜色ないほど、二階派議員の不祥事は選り取り見取りの様相を呈している。すなわち、「数は力」=「質より量」。
ここでこの稿はひとつの訂正を迫られる。先に〈二階のふたつの資質〉と記した。
「割り切り」と「気遣い」
だが、自身の信念に殉じない割り切りと、質を問わずとにかく数を集めるために使われる気遣いは、とどのつまり同根であり、〈二階のひとつの資質〉と言わねばならなかったのだ。
「融通無碍」
換言すると、何でもありの無原則。
それが派閥の数集めに使われているうちはまだ可愛い。しかし、一度(ひとたび)外交の場に持ち込まれると話は違ってくる。
昨年後半、二階の地元和歌山では、毎月の如くある「恒例行事」が開催されていた。そこでいつも木霊(こだま)したのは、ひとつのキーワードだった。
「親中派、親韓派の二階俊博」
右翼団体による街宣活動。それは故なき誹謗中傷ではなかった――。
(敬称略)
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