“強制わいせつで懲役”の創立者が東京福祉大総長に 国が介入できない理由

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「過去に強制わいせつで実刑判決を受けた創立者が理事長・学長に就任したというのは、私もちょっと驚いています」

 先月25日に行われた定例記者会見で、そう発言した萩生田光一文科相(57)。目下、彼の頭痛の種は、東京福祉大学の中島恒雄理事長兼学長(73)の存在なのだという。

 中島氏は2008年1月に強制わいせつ容疑で逮捕。懲役2年の実刑に服したものの、昨年11月20日付で学校法人の総長をはじめとするトップの座に返り咲いた。

 彼の行状を思い出せば、萩生田氏の弁も当然で、

「複数の女性職員に対し、無理やりキスをしたり身体を触ったり、出張先の上海のホテルでコトに及ぼうとしたことも。さらに、学長室にはベッドやシャワーが備え付けられ、避妊具やバイブ、精力増強剤まで見つかったという前代未聞の事件でした。4回にわたる逮捕には強姦未遂の容疑も含まれていた」(全国紙記者)

 事件後、中島氏はすべての役職を追われ、大学側は“二度と中島氏を関わらせない”との改善計画を文科省に提出。それが一転、復帰とは、何があったのか。

 同大関係者曰く、

「私は、中島さんの復帰を、就任後に送られてきた一斉メールで知りました。その後、Zoomによる全体ミーティングで何度か彼の話を聞きましたが“公務員や教員採用試験の合格率を上げて大学の魅力を高めよう”など実のある内容も話していた。大学の今後を考えれば必要な人材だという面も否定できないんです」

 とはいえ、わいせつ教員に二度と免許を取得させない制度の創設まで叫ばれる昨今。強制わいせつで実刑判決を受けた大学トップの復帰が“驚いた”の一言で済まされてよいはずもない。

 だが、文科省の関係者は、

「執行後10年で刑が消滅する以上、中島氏の復帰の是非を法的に問うことは難しいのです。それに文科相には私立大の人事に介入する権限もありませんから、萩生田さんも歯痒いところでしょう」

 ならば、大学設置の認可ごと取り消せないものか。

「私立大の場合、確かに大臣が閉鎖命令や解散命令を出せますが、ハードルは極めて高い。文科省は18年度にはすでに中島氏の復帰を把握しており、翌年度には“外国人留学生の大量失踪問題”と合わせて、年間5億円前後あった補助金は全額カットとなっている。現状でとれる方策はこれが限界でしょう」

 兵糧攻めに効果がなければ、それ以上は打つ手なし。監督官庁・文科省の存在意義が問われかねない。

週刊新潮 2021年1月14日号掲載

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