菅首相“オレがやるからコロナは大丈夫”の過信が仇に 「アフター菅」への道
大臣は総務相しかやっていないなぁ
《19年11月に安倍晋三首相(当時)の通算在任日数が歴代最長になった時だった。議員宿舎に帰宅した菅氏は「長く続けることがおめでたいわけではない」と言った上で、「権力」について「重みと思うか、快感と思えるか」とボソッと語った。重圧に潰されないようにするためには、思うように政策を進める快感を力に変えられるかどうかだということだ。別の機会に「官房長官は楽しいか」と尋ねると、「楽しいに決まっているだろ。やりたいことができるんだから」と明快だった》
《そんな菅氏には安倍政権の官房長官は理想の役回りだった。菅氏は言葉足らずな面が目立ち、政治的パフォーマンスも苦手で、国家観がなく、外交に強い思い入れはないように見える。安倍氏がこうした面で前面に立つ一方、内政の統括を菅氏に任せた。この信頼感が菅氏に並の官房長官以上の「権力」を与えた》
ある自民党の閣僚経験者はこんな風に評する。
「たっぷり汗をかいてきた、官房長官を歴代最長期間務めた、それで首相の意思決定を間近で見続けた……というのが菅さんの売りだったわけですが、こうやってコロナ対策で国民の不満のマグマが高まり、あっと言う間に内閣支持率が不支持率を下回ると、“そういえば菅さんって大臣は総務相しかやっていないなぁとか、党3役を1つもやってないよね、だからダメなんじゃないの”っていうような批判が出てくるんですよ。菅さん自身が一番、“こんなはずじゃなかった”と思ってるんじゃない?」
“こんなはずじゃなかった”は足元でも進行しており、元日付けで、政務担当の首相秘書官を菅事務所の秘書から派遣されていた新田章文氏から財務省出身の寺岡光博氏に交代させた。
事実上の更迭である。
首相秘書官は7人いるが、6人は各省庁からの出向。うち4人は官房長官時代からスライドだった。
政治部デスクによると、
「更迭された新田さんは39歳で、内閣支持率が下がり続ける中で危機感を持ち、課題をまとめて菅さんに提案していたようですが、菅さんは“若くて力不足”と判断したようです」
「世の中を動かしているのは政治だ」は、「世の中を動かしているのはオレだ」へ。それが「そんなオレがやるんだから間違いない」となり、落とし穴があった。
「今のところ、支持率が下がってもそれが野党の支持率アップにつながっているわけではないのは、言い方は悪いのを承知で言えば不幸中の幸い。今後、ワクチン接種が拡大していけば状況は好転するんだろうけど、それがうまく行かなければ、菅さんで選挙は戦えない、“アフター菅だ”っていう話にならざるを得ないでしょう」(先の閣僚経験者)
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