コロナで激増の「フレイル状態」とは 筋力、認知能力が衰弱、黒柳徹子も実践する筋トレとは
何より重要な「社会参加」
管理栄養士の濱田美紀氏が補足する。
「人の筋肉というのは、毎日壊れては新たに作られます。つまり、自分に必要な量の食事をしなければ、筋肉が減ってしまうのです。筋肉に必要な栄養素は肉や魚、卵などに多く含まれているタンパク質ですが、それを身体に取り込んで筋肉にするためにはビタミンB6を摂取することも大事です。魚類ならマグロや鮭、肉類なら牛レバーや鶏ミンチ、果物ならバナナ、野菜なら赤ピーマン、ニンニクなどに多く含まれているので、筋肉が減ってきたなと感じている方はこれらの食材も積極的に食べていただきたいです」
フレイルにならないための理想的な献立はこうしたタンパク質が豊富な主菜に野菜の副菜、果物、さらに、ごはんなどの糖質である。しかし、そうはいっても、毎食毎食、栄養バランスのとれたメニューを用意するのはしんどい。そういう方にお薦めしたいのが缶詰や冷凍食品だ。
「これらを使うことに抵抗がある方もいると思いますが、栄養価の面ではあまり変わりません。缶詰ならサバ缶やツナ缶などでタンパク質も摂れます。カット野菜の冷凍食品も便利。高齢で一人暮らしだと安くて手軽なカップラーメンを食べてしまうという方もいます。いきなりやめろ、とは言いませんが、やきとりの缶詰や冷凍ほうれん草を加えるだけでもタンパク質とビタミンをプラスできます」(同)
そして、何より重要なのが前述した予防3本柱の三つ目、「社会参加」である。
先の久野氏によれば、
「フィジカルな問題を筋トレや食生活で解決できても、人と会話したり交流を持ったりしなければ、セルフ・エフィカシー(自己効力感)が弱まってしまいます。これが問題です」
セルフ・エフィカシーとは心理学用語で「自分はこの行動が達成できる」という自信や意欲を指す。
「外出してこのくらいの距離を歩けたとか、ボランティアや地域の行事に参加して、こんな活動をしたとか、そういう体験を積み重ねると、自分にはこんなことができる、という意欲につながります。しかし、そういう体験がなければ塞ぎこむばかりで、筋トレをする意欲もなくなる。社会参加はフレイル予防に欠かせません。ステイホームは高齢者の大切な社会参加の場を奪っているのです」(同)
だからこそ久野氏は、一律で帰省を控えて、と呼びかけたことにも懐疑的だ。
「高齢者だからと何も考えずに自粛するのではなく、基礎疾患の有無も考慮しバランスを考えて社会に参加していくことが大事だと思います。コロナ自粛はフレイルを一気に促進させます。お正月に親族で集まらないことが果たして正しかったのでしょうか。皆が集まって笑い、体を動かすことが免疫力を高めることも忘れてはいけません」
自粛を余儀なくされた年末年始のステイホームに引きずられて、外出が減ってはいまいか、痩せてはいまいか。緊急事態宣言が発出されても、体は少しでも動かすのが「吉」。正月気分が抜けたところで、自身の生活を見つめ直すことを強くお勧めしたい。
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