コロナワクチン3種を比較 日本製は大きく出遅れ

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 昔から「薬九層倍(くすりくそうばい)」と言うように、原価の分からぬ薬を高値で売るのが製薬ビジネスである。コロナワクチンにも当てはまるのだろうか。

 菅首相が新型コロナウイルスのワクチンについて「2月下旬には接種を開始できるようにする」と明らかにしたのは1月4日のこと。すでに政府は約2億9千万回分のワクチンを予約済みだという。

「厚労省では技監をトップとする専門チームがアメリカなどの製薬会社と交渉しており、7月末にはファイザー(ドイツのバイオンテックと共同開発)から1億2千万回分、次いでモデルナから5千万回分、さらにアストラゼネカ(オックスフォード大学と共同開発)から1億2千万回分のワクチンを確保しています」(厚労省担当記者)

 総額にして約6714億円を払うことになっているが、ワクチン1回あたりの値段はいくらなのだろうか。

「一番安いのがアストラゼネカ製で200~400円。同社のワクチンはチンパンジーに感染させたアデノウイルスにコロナウイルスの遺伝子を組み込んだもの。同社は早くから利益度外視で供給することを明らかにしています」(同)

 一方、ファイザー製は1500~2千円。モデルナは4千円前後といわれている。アストラゼネカと違うのは、たんぱく質を合成する「mRNA」を直接注射することから、副作用が出にくいのだという。

 気になるのは、製薬会社の収支である。

「知られているように、アメリカ政府はコロナ対策の決め手として、ワクチンの早期開発・供給を目指す『ワープ・スピード作戦』を展開しています。そのため、製薬会社に約180億ドルの予算を投入しました。つまり、創薬のコストはほぼゼロ。これからは作った分だけ利益になります」(医療誌編集長)

 ワクチンメーカーには、すでに日本の分を含めて約78億回分の“予約”が入っているというが、仮に1回千円と安めに見積もっても約7兆8千億円が転がり込んでくる。

 それだけではない。

「変異したコロナウイルスにワクチンが効かなくなった場合、新たに開発するたびに、世界中から億単位の注文が入ってくることになります」(同)

 現在のところ、治験を終えて認可に漕ぎ着けたか、その直前にあるワクチンは世界中で9種。その中に「日本製」はない。

週刊新潮 2021年1月14日号掲載

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