「山田久志」の人生を変えた「王貞治の一打」 「打たれた瞬間、腰が抜けた」(小林信也)
王貞治に初めて会った時、私は訊ねた。
「オールスターと日本シリーズを合わせて910本のホームランを打った中で最も印象深い一本は?」
二十数年前、NHKの「スポーツ100万倍」という番組の収録前。プロデューサーが、「一本なんて、無理ですよねえ」、助け舟を出した。しかし、王はその声を制してすぐ言った。
「ありますよ」
あの一本に違いない、私は悪い予感に胸をえぐられた。王の言葉は続いた。
「昭和46年の日本シリーズ第3戦、阪急の山田投手から打った逆転サヨナラ3ランホームランです」
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