「幸福の科学信者」が小田原市成人式で“ゲリラスピーチ”の波紋 市と教団の見解は?

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 お気に入りの振袖を用意し、晴れの日を心待ちにしてきた新成人たちも多かったであろう。1都3県では緊急事態宣言発令中に迎えることになった今年の成人式。中止や延期にした自治体も少なくなかったが、オンライン開催を選んだ神奈川県の小田原市では、ある新成人が前代未聞の”ゲリラスピーチ”を行なった。当初の予定とは全く違うという話になり……。

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 直前まで各自治体が対応に揺れる中、小田原市が1月10日に予定されていた成人式をオンライン開催に変更したのは6日のことだ。同市の子ども青少年部青少年課の担当者が経緯を説明する。

「成人式の主催は新成人たちで結成された『成人式運営委員会』で、市は共催者という立場です。開催方法については、選定された7人の運営委のメンバーが、8月上旬から市役所の施設などを使って、何度も話し合ってきました」

 今年はコロナ対策が主な焦点となったというが、

「彼らはサーモグラフィーを借り、フェイスシールドやアルコールの除菌シートを配布する準備などを進めてきました。そして、会場を2つに分け、さらに2部制にする方式で昨年12月に一旦、開催を決めたのです。ただ、直前になって緊急事態宣言が再発令される情勢となり、そんな開催方法ですら難しい状況に追い込まれました。そこで改めて運営委と市で話し合い、最終的には市長の判断でオンライン開催とすることに致しました」(同)

 コロナ禍で大変な思いをしてきたからこそ、みんなで集ってこの日を祝いたい。そんな思いで準備を重ねてきた実行委のメンバーたちは、さぞ悔しがったに違いない。それでも彼らは、オンラインで初志貫徹しようと本番に臨んだのだった。

 1月10日、式典は小田原市民会館で、無観客ライブ配信方式で粛々と始まった。運営委の開会宣言に始まり、守屋輝彦・市長と奥山孝二郎・市議会議長による祝辞、県選出議員の国会議員や県知事らの祝電紹介が続いた後、壇上に座っていた新成人4人による「成人の抱負」のスピーチとなった。

突然、壇上で「エル・カンターレ」と語り出した新成人の男性

 問題はトップバッターの男性で起きた。緊張した様子でマイクの前に立ち、用意していた原稿を広げた男性。

「本日は私たち新成人のためにリモートというかたちではございますが、成人式を開催してくださり誠にありがとうございます」

 真っ当な挨拶から始まったスピーチ。ただ、極度の緊張なのか、どもったり、噛んで言い直すことが多い。やがて彼は、コロナウイルスについて語り始めた。中国の武漢から発生し、最近では変異種が生まれ、世界が混乱している現状を説明した後、

「しかし、医学的には恐怖心を持っている人ほど免疫力は下がり、感染しやすくなると言われています。逆に、明るい心を持って生きている人は免疫力が上がり、感染しにくくなると言われています」

 あまりに自然に語るので、つい聞き流してしまいそうだが、よくよく聞くと耳を疑うような話である。だが、こんな“オカルト”は序の口。ここから彼は“本領”を発揮していくのである。

「自分は高校では栃木県の、大学では千葉県の宗教系の大学に通っていて、そこで『エル・カンターレ』という神の教えを学んでいます。去年、コロナの影響で世間の学校ではリモート授業になったり休校になったりしたそうですが、自分の学校では1年間、普通に授業を受けたりサークル活動をしたり、また入学式を行ったり文化祭を行ったりすることができました。しかも、感染者は1人も出ていません」

「エル・カンターレ」? 知らない人には、なんのこっちゃであろう。実は、これはある宗教法人では誰もが知っている言葉である。

〈「エル・カンターレ」とは「地球の至高神」の御名であり、「地球の光」を意味しています。「エル・カンターレ信仰」とは「地球神の存在を認める」という信仰です〉
〈そして、エル・カンターレの中核であり、「本体意識」であられるのが大川隆法総裁なのです。〉(「幸福の科学」ホームページより)

 そう、彼は「幸福の科学」の信者で、成人式という公の場で、自分の信じる宗教への思いをぶちまけてしまったのだ。

「神様とかあの世とか、目に見えないものは信じないという人も多いと思いますが、ウイルスも目に見えない存在であり、人々に恐怖を脅かしています。それに対して神様は私達に確実に希望を与えてくださっています」

 もし観客が入っていたならば騒然としたであろうが、彼は誰に阻まれることもなくその後も、6分間にわたってスピーチを続けたのだった。

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