「日韓」間で交わされた条約を破ることを気にしない「文在寅」にならう韓国の裁判所

国際 韓国・北朝鮮

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隠蔽と歪曲、無理を通せば…

『反日種族主義』の共著者である李宇衍(イ・ウヨン)が著した『ソウルの中心で真実を叫ぶ』によると、「欲しがりません勝つまでは」「贅沢は敵だ」というスローガンを掲げた当時の軍事政府は、国民に貯蓄を奨励し、朝鮮人を含む労働者の賃金の一部を強制的に貯蓄させた。

 多くの朝鮮人が現金収入を求めて募集に応じ、炭鉱労働に従事したが、過酷な労働に耐えかねて、逃げ出した者も少なくない。

 さらに、日本がポツダム宣言を受諾して、敗戦が決まると職場を離れて帰国する人が続出した。

 退職積立金や強制貯金など、退職に伴う金銭を受け取らずに帰国した不二越の労働者は485人に上り、同社は未払い金9万325円24銭を供託した。

 正規の手続きで退職すれば、賃金や退職金、強制貯金は支払われたが、夜逃げ同然で行方知れずとなった労働者に支払うすべはない。

 不二越の供託金は1人平均186円余りで、現在価値に換算すると37万2000ウォンだ。

 先述の通り、その270倍の支払いを命じる判決が下されたわけだが、未払い金はいうまでもなく日韓請求権協定で消滅している。

 元朝鮮半島出身労働者や元慰安婦が日本にカネを要求し、韓国の裁判所が認める背景に、隠蔽と歪曲、無理を通せば道理が引っ込む韓国社会の悪癖がある。

 韓国政府は、「65年の日韓基本条約で日本から支援を得たことと請求権が消滅したこと」を国民に知らせなかった。

 基本条約の締結に際し、日本は統治によって被害を受けた韓国人に直接補償を行うと提案したが、韓国側は韓国政府に一括で支払うことを要求し、日本側はこの要求を受け入れた。

 日本が個人への補償金を支払ったことが明るみに出ると韓国政府は、国民に補償金を支払うことになる。

 韓国政府は補償金を日本から受領したことを隠蔽して、産業育成やインフラ整備、国の事業に流用した。

裁判官の心に訴えるか否か

 韓国政府が交渉関連の外交文書を全面的に公開したのは、締結から40年経過した2005年だった。

 公開した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は首相の傘下に設置した特別な組織を通じ、「強制動員被害者は協定で解決済みだが、日本軍慰安婦や原爆被害の賠償請求権は未解決だ」という独特の解釈を明らかにした。

 以後、朴槿恵(パク・クネ)政権までは、日本製鉄や不二越など、労働者の補償問題は請求権協定で解決済みという立場を韓国政府は維持してきた。

 しかし、文在寅(ムン・ジェイン)が大統領に就き、韓国最高裁はこれをひっくり返したことになる。

 筆者はかつて、韓国人の法律家に韓国の裁判について聞いたことがある。

 原告と被告のいずれが正しいかという客観的な事実は2の次で、いずれの主張が裁判官の心に訴えるか否かで判決が下される例が多いという話だった。

 日本は日韓請求権協定を掲げるが、韓国の裁判所は、国家間で交わされた約定反故を厭わない弁護士出身大統領に倣っている。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月16日掲載

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