1年前、コロナを新聞はどう報じたか 朝日は「それほど感染は広がらないとみている」
僅か165字の記事
毎日新聞も同6日に「中国で原因不明のウイルス性肺炎」との記事を掲載した。だが文字数は僅か165文字だった。
400字詰め原稿用紙の半分にも満たない量であり、まさにこの短さが“対岸の火事”と判断したことを物語っている。朝日と読売は1月8日に掲載された見出しを紹介しよう。
「中国・武漢、原因不明の肺炎 患者50人超、香港でも症状」(朝日新聞)
「中国 原因不明の肺炎 武漢 香港・台湾でも疑い例」(読売新聞)
1月9日に初めて「新型コロナウイルスが検出された」と報じられたのは冒頭でご紹介した通りだ。
例えば読売新聞は同日の夕刊社会面に「中国の肺炎 新型コロナウイルスか 現地報道 複数患者から検出」との記事を掲載した。
3紙の記事から感じられるのは「大げさに報道しないようにしよう」とする姿勢だ。
この編集方針を3紙の判断ミスと指摘するのは酷かも知れない。何しろ厚生労働省もWHOも専門家も口を揃えたように「たいしたことはない」と指摘していたからだ。
WHOは「感染しにくい」
具体的に見てみよう。毎日新聞は1月9日の朝刊に、「中国で原因不明の肺炎 厚労省『過剰な心配不要』」との小さな囲み記事を掲載した。
武漢市から帰国する日本人に対し、せきや発熱の症状がある場合は検疫官に伝えるよう厚労省が呼びかけを始めた、というのが記事の骨子だ。
だが、読者の過剰反応を不安視したのか、《今のところ人から人への感染は確認されていない》と指摘し、厚労省の《「過剰な心配は必要ない」》とのコメントを紹介している。
読売新聞は1月10日、「中国の肺炎 新種か」との記事を掲載したが、ここにも「読者が大げさに受け止めない紙面にしよう」という配慮が感じられる。
まず袖見出しが「コロナウイルス WHO『感染しにくい』」と安全性を訴えるものになっており、中見出しも「専門家 冷静な対応を呼びかけ」と、読者を沈静化させようとする意図が明確だ。
記事に登場した専門家も、とにかく冷静になれと呼びかけた。
《「患者に接する医療従事者が感染しておらず、死者も出ていない。それほど恐れる必要はなく、正しい情報を得て行動してほしい」》
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