海千山千のシングルマザーから逃れられない48歳男性 すでに狂い始めたエリート人生
シングルマザーの彼女にどんどん引きずられて
男性はよく、妙なところで義侠心を発揮する。「ここでそういうことをしたら、あの海千山千の女に取り込まれるだけ」と思うような場面でだ。周りの女性たちのハラハラをよそに、彼は結局、どっぷりと「取り込まれて」いく。そして女性たちは思うのだ。「あ~あ、やっぱり」と。
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「シングルマザーの女性とわりない仲になって、二進も三進もいかなくなっている男友だちがいる」と女友だちから聞かされ、その人・コウジさん(仮名=以下同・48歳)に会わせてもらった。中肉中背、どこにでもいるサラリーマンの彼だが、女友だちによれば有名企業に勤めるエリートなのだという。
ふたりで会って雑談から仕事の話になると、その闊達で論理的な話し方から、仕事ができる人なんだろうなと思わされた。
そんなコウジさんが結婚したのは、37歳のとき。
「仕事と当時はまっていたフットサルに夢中になっていて、気づいたら35歳を過ぎていました。僕はイケメンでもないしモテないから焦ったけど、あちこち声をかけていたら、たまたま友だちが5歳年下の女性を紹介してくれて。穏やかでいい人だったので、このチャンスを逃したらもう結婚できないと思って3ヶ月くらい付き合って決めました」
ごく普通の結婚生活が始まり、1年後の出産を契機に妻は仕事を辞めた。妻は迷っていたが、双子だったため、「どうしてもキャリアを積みたいわけでないなら、いったん子育てに集中してもらえないだろうか」とコウジさんが頼んだのだ。もちろん、彼も極力、仕事をセーブして子育てをした。
「楽しかったですよ。こんなに毎日、成長がわかる生きものがいるなんて(笑)。かわいい娘ふたりと接していた時期は、人生でいちばん楽しかったかもしれない」
妻は変わらず穏やかだ。娘たちが幼稚園に上がるころには料理教室に通い始め、もともとおいしかった食事にも磨きがかかった。
「これを幸せっていうんだろうなと実感していました。平日はめいっぱい働いて、週末は休んで家族と過ごす。それが何よりの楽しみになりました」
幸い収入も悪くない。40歳のとき、彼はマイホームを手に入れた。
同僚につきあわされたスナックで…
何も不満がないというのは、人間にとっていいことなのだろうか。もちろんコウジさんにも、仕事上の悩みはあった。だが、それは同僚や上司に相談すれば解決していく。そして、さらに新たな道を切り開けば、周りがさらに認めてくれる。だから結局、不満はないのだ。
「妻と小さな諍いのようなものはありましたけど、そんなものはどこの家庭にもありますよね。もともと彼女とは価値観が合わないのはわかっていました。だけど価値観が合うなんてこともあり得ない。妻はきちんとした人。それだけで尊敬に値すると思っていたから、まったく不満のない結婚だったんです」
恋愛感情から結婚したわけではない。家庭を一緒に構築していくために最適な人と出会えたのだ、と彼は言う。妻とは常に対等、お互いに上でも下でもない。
そんな彼が1年半前に「出会ってしまった」のは、シングルマザーのヤヨイさん(32歳)だ。珍しく同僚につきあわされたスナックで、彼は客として来ていたヤヨイさんを見かけた。サラリーマン風の男とベタベタしながらカラオケで歌っていた彼女を見て、同僚は「また来てるな」とつぶやいた。
「彼女、シングルマザーなんだよと同僚が言うんです。そのあたりのスナックに来ては男とべったりして、なんとなく小遣いをもらったりしているらしい。昼間はアルバイトをしていると同僚は言っていましたが、僕はなんだか彼女のことが気になって……」
しばらくしてコウジさんは彼女に話しかけてみた。
「5歳の子どもを寝かしつけてから遊びに来たというので、僕、つい怒ってしまったんですよ。小さな子をひとり残して何かあったらどうするんだって。すると彼女は驚いたような顔をして『お父さんみたい』と。お父さんはどうしているのか尋ねたら、顔も知らないと。彼女自身もシングルマザーの母親に育てられたそうです」
その日、同僚は家から電話がかかってきて先に帰った。ヤヨイさんは、妊娠したとたんに逃げた男の愚痴を言いながら、ぐいぐい呑む。コウジさんは彼女を放って帰れなくなってしまった。
「店のマスターは、放っておけば1人で帰るよと言ったけど、そんなわけにもいかない。店から連れ出して家はどこか尋ねました。そこは繁華街だったんですが、裏のほうの路地裏のアパートで……。一間の部屋に子どもが寝ていました。彼女を子どもの横に寝かせて帰ろうとしたら、すごい力で首に手を巻きつけてきたんです」
彼女は酔ってなどいなかったのではないか。彼を狙っていたのではないだろうか。だが彼は、彼女は泣いていたと言う。
「なんだか、たまらなくかわいそうになってしまって。と同時に、僕の人生で感じたことのないような欲望を覚えたんです」
彼はそんな自分を恥じるように言った。男と女、何があっても不思議はない。そして彼は彼女と関係をもった。自分を律することができなかったのだ。
「子どもは起きないと彼女は言ったけど、やはり気にはなりました。でもそれすら、そのときの僕には大きな刺激で。本当に恥ずかしいことですが」
暗闇の中、無言でふたりはつながった。自分たちの欲望の激しさに彼自身がとまどっていたという。理性で生きてきた彼が、初めて欲望の渦に巻き込まれた時間だったのだろう。
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