「アキタフーズ」事件、現金授受現場に居合わせた国会議員の証言 「封筒に入った現金を渡され…」
鶏卵生産・販売大手「アキタフーズ」を巡る贈収賄事件の捜査が大詰めを迎えている。朝日新聞は新年元日の1面で、アキタ社から吉川貴盛元農林水産相に渡った現金の総額が計1800万円に上ることをスッパ抜き、さらに、3日の1面では、西川公也元農水相にも1500万円超が渡っていたこともスクープ。その西川氏も同席した現場で、現金はどのように手渡されたのか。現職国会議員の初証言――。
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吉川元大臣を受託収賄容疑で立件することを目指している東京地検特捜部が描く事件の構図はこうだ。
大臣在任中の2018年から19年にかけて、吉川氏は「アキタフーズ」の秋田善祺元代表から計500万円の現金を受け取った。当時、OIE(国際獣疫事務局)はアニマルウェルフェア(動物福祉)を重視した飼育基準の作成を進めていたが、ケージでの飼育が9割を占める日本の業者がこの基準に従うと莫大な負担増となるのは間違いない。そこで、元代表が吉川氏に便宜を図ってもらえるよう“請託”した――。
特捜部は秋田元代表のスケジュール帳や出金記録を元に捜査を続けている。例えば、そのスケジュール帳の18年2月14日の欄には、〈18:30西川・野村先生会食(北京)〉とある。〈西川〉は西川元農水相、〈野村〉は自民党の野村哲郎参院議員、〈北京〉は帝国ホテル内にある高級中華料理店のこと。出金記録のほうには同じ日付で〈500000〉との記載があり、〈内容〉欄には、〈西川、野村?〉の文字があるが、その場で何があったのか。
「受け取っときなさい」
「あの時は、西川先生から誘われましてね。秋田さんが私の自民党農林部会長就任のお祝いをしてくれるということで行ったんです」
そう語るのは、野村哲郎議員本人である。
「秋田さんと会うのはそれが2度目でしたが、途中で封筒に入った現金を渡された。中は見ませんでしたが、感触で、だいたい30万円から50万円くらいだなぁというのは分かりましたよ。私は『こういうのは受け取れません』と言ったのですが、西川先生が『まあ、就任祝いだから受け取っときなさいよ』って」
結局、その金を自民党竹下派「平成研」のパーティー券購入代金として受け取ることにした野村議員。
「秋田さんは『これじゃ足らないだろう』と言っていて、後で平成研に20万円を振り込んできました」
会食の場での30万円と振り込みでの20万円で計50万円。出金記録の記述とピタリと一致するのだ。
「畜産では他に豚もいれば牛もいるわけですけど、そういうところではお祝いにお金を渡すようなことはないものですから。卵を産むニワトリのグループではこういうことをやっているんだなぁと思いました」
そんな感想を述べる野村議員の証言には、今回の事件の本質を物語る重要な部分がある。それは、西川氏の「受け取っときなさいよ」という発言だ。
「地検が立件を目指す吉川氏に秋田元代表からの金を“受け取るよう”勧めたのも西川氏でした。また、西川氏は秋田元代表から頼まれて複数の国会議員との面会をお膳立てしており、政界における『鶏卵マネー』の“汚染源”だと見られているのです」
と、地検担当記者。
「西川氏は17年に落選し、18年1月にはアキタ社の顧問に就任しています。そのことから、地検は一時期、西川氏を贈賄側として立件できないか検討しましたが、難しいと判断したようです。立件を完全に諦めたわけではありませんが、西川氏が逮捕される可能性はかなり低いと見ています」
巨悪は眠る――。