「コロナで医療崩壊」に慈恵医大の名医が異論 病院にはまだ“余裕”がある!
人為的に設定された病床とICUの数
2度目の緊急事態宣言が近畿圏にも拡大されることになった。理由は「医療崩壊」を防ぐため、である。だが、東京慈恵会医科大学で対コロナ院長特別補佐を務める大木隆生氏(58)は、こうした見方に真っ向から異を唱えるのだ。
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たとえば日本医師会の中川俊男会長は、1月6日の記者会見で「現実はすでに医療崩壊」と言い切った。多くのメディアや専門家も同様に訴える以上、国民が怖がるのも当然だろう。
だが、大木氏の考えはこれと異なるようだ。
「私は以前から、新型コロナの患者でも、そうでない患者でも、救える命が救えなかったというのが医療崩壊の定義だと考えています。昨年春に北イタリアで起きた、人工呼吸器の不足にともなう命の選別こそが医療崩壊です。
一方、日本はもう医療崩壊している、と明言した日本医師会の中川会長は、適切な医療が適切なタイミングで受けられなければ医療崩壊だ、と定義しましたが、違うと思います。日本の大学病院は従来から、3時間待ちで3分の診療と揶揄されます。中川先生の言葉を借りれば、これも医療崩壊にならないでしょうか」
もっとも大木氏は、昨年1~2月の時点では新型コロナを誰よりも危険視していた。当初は東京が武漢同様になると警鐘を鳴らし、「全国ではじめて手術をキャンセルしたのも、おそらく慈恵の外科です」。だが、4月になっても被害が小さく、欧米に比べて感染率も死亡率も低いことから、日本独自の対策の必要性に気付いたという。
立場上、病院事情に精通している大木氏。メディアや医師会が“逼迫”と伝えるICUについても、
「東京都内で新型コロナのために用意されている一般病床4千に対し、三千数百が埋まっていて、病床使用率は9割だ、といわれたら焦ります。ICUベッドも250床のうち、129(1月10日現在)が埋まり、5割を超えています」
しかし、この数字にはウラがあるという。
「実は、東京都にはICUとHCU(準集中治療管理室)を合わせて2045床ある。250分の129という数字を語る際、少なくともハードウェアのキャパシティがこれだけあることを知る権利が、国民にはあります。ベッド数自体も都内に10万6240あり、そのうち3500なら使用率3.3%、ICUも2045分の129なら6.5%程度です」
つまり、現在新型コロナ用として使われていない病床やICUを柔軟に運用すれば、医療崩壊など起こるわけがない、ということなのだ。1月14日発売の週刊新潮では、医療現場の実態や新型コロナを指定感染症第2類から外すべき理由など、大木氏の提言を詳しく報じる。