ヒトラーの後を追う文在寅 流行の「選挙を経た独裁」の典型に

  • ブックマーク

「異質な国」にひそかに変身

――でも、陳重権元教授のように「ルールの中で闘え」と呼びかける人がいます。

鈴置:知識人にはそう訴える人もいます。でも、多くの韓国人は聞く耳を持たないでしょう。ルールの重要さ、つまり法治や三権分立の貴重さが韓国では意識されていないからです。

 法務部長官が4か月に3回も指揮権を発動したというのにまったく問題化しない。次期大統領選の有力候補が裁判所を攻撃しても、批判の声は一切あがりません。

――韓国人はなぜ、法治の重要さが分からないのでしょうか。

鈴置:それは極めて興味深いテーマです。韓国研究者の間でも議論が繰り返されてきました。あまりに大きいテーマなので、日を改めて説明します。

 今はとりあえず、隣国のなけなしの民主主義が崩壊し始めた、という点に注目下さい。韓国が法律に基づいて行動する西欧型の国家になるとの期待は捨てることです。

 1月8日、韓国の裁判所が元慰安婦の請求に応じ、日本政府に対して賠償金を支払うよう命じました。翌9日、茂木敏充外相は「国際法上も2国間関係上も到底考えられない異常な事態」との認識を示しました。

 韓国の異様さを訴えるために「異常」との単語を使ったのでしょう。でも、外交の専門家が今になって韓国を「異常」と認識したのなら、それは遅すぎます。

 無法ぶりが目立つようになったのは数年前から。しかし、21世紀に入った頃から韓国は「異質な国」へと、ひそやかにですが着実に変身していたからです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月12日掲載

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[5/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。