「高学歴Uターン女子」が田舎で経験した男尊女卑 「就労すれども定着せず」の現実
故郷の就職は地獄
本州中部地方の某市──。駅前には、この町からノーベル賞受賞者を輩出したことを示す案内が掲げられている。丸山利香さん(仮名・29歳)は高校までここに育ち、卒業後は都内の国立大学に進学した。数年前、老いゆく家族とともに、自然豊かな地で暮らしたいと考え、ふるさとに戻った。
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理数系の学部を卒業した彼女は就職に困ることもない、世間では才媛と呼ばれる経歴の持ち主だ。
実際、東京の大企業からの内定もでた。しかし、それを蹴っても、地元に帰ろうと決意したのだ。コロナ禍の前ではあったが、折しも二拠点居住ブーム、地方移住ブームであり、自治体や傘下団体によるIターン、Uターンのための就労説明会は都内で連日のように開かれていた。
丸山さんは県内でも大手の会計事務所に就職し、仕事をしながら地道に公認会計士試験に挑戦しようかな、という考えも芽生えた。
将来は実家で家族の面倒を見ながら、独立して公認会計士の事務所を構えてもいいかな。そんな夢もあってのUターン就職を果たしたのだった。
だが、就労1日目から「ウソ」が発覚した。丸山さん御本人に語っていただこう。
「入社初日に事務所の理事長から、『男性は総合職だが、女性は事務職だ』と言われました。もちろん求人広告には、そんなことは全く書いてありませんでした」
だまし打ちのような、差別的待遇の告知であった。それに加え、就業開始時間の朝8時半前には出社し、事務所内外の清掃を言い渡されたという。
「これも新入社員のなかでも女性だけの仕事でした。抗議すると、ようやく男性にも外を掃かせるようにはなりましたが、要は家庭と会社を同じように考えているんですね。女は家事と掃除、男は外で仕事みたいな、いつの時代かと思うような感覚が、地方ではいまだに当たり前です。やっぱり、大学を出てきてUターンしてきた同世代の女子に訊いても、県内の企業は県庁や市役所など役所をのぞけば、どこも民間はそんな感じだっていうんです。時代錯誤も甚だしい。これにハローワークや労基署も気づいていながら、スルーして地元企業とうまくやっているのが腹立たしいです」
いまだに残る男尊女卑
さらには、である。
「入社時の社員教育がまたすごくて、女性社員の同僚や先輩とは個人的な連絡先の交換やプライベートでのやりとりをしないよう言われました。その理由が全くおかしくて、『女性職員同士が結託すると、ろくなことを言わないから』だそうです」
社内で、立場や待遇の違いを、露骨に言葉や態度で示すのもよくあることだという。
「パートさんに対しては名前で呼ばずに『おまえ』です。場合によっては無視することも。そして、男性社員たちは自分が誤っていることを女性から指摘されると、みんなの前で逆に大声で叱責したりします」
そんな職場に嫌気が差した丸山さんは、結局、帰郷後わずか1年ほどで東京に戻り、現在は「男女平等」の商社で経理担当として、意欲的に働いている。
彼女がUターン就労をあきらめる決定打となったのが、事務所の理事長による発言だったという。
「女性は結婚して子どもを産んだら、仕事に責任持てないでしょ? どうせ辞めるのに、高い給料を払ったり役職に就けたりはできないよ」
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