動ける巨漢、総体重317キロのド迫力 「西武」“超重量クリーンアップ”結成なるか?
12人の1位指名のうち、8人が大学生となった2020年のドラフト。その中でも一際異彩を放っているのが西武1位の渡部健人(桐蔭横浜大)だ。何よりも目を引くのが176cm、112kgというその体格である。2020年12月8日に行われた新入団発砲会では、「周りからは『おかわり君3世』と言われますが、『よくばり君1世』と呼ばれるようにしていきたいと思います」と発言し話題となった。
そんな渡部だが、もちろん風貌だけではなく実力も十分に備えている。中学時代は斉藤宜之(元巨人、ヤクルト)、森野将彦(元中日)など多くのプロ野球選手を輩出している中本牧リトルシニアでプレー。進学した横浜商大高を1年の冬に退学して日本ウェルネスに転入し、1年間は公式戦でプレーできない日々を過ごしたが、3年時には体重100kgを超える強打のショートとして東京都内では話題の選手だった。
桐蔭横浜大では1年時から4番を務め、神奈川リーグを代表する打者に成長。ラストシーズンとなった4年秋は10試合で5戦連発を含む8本塁打、リーグ記録を更新するシーズン23打点と打ちまくりMVPを受賞。この活躍が1位指名の決め手となったことは間違いないだろう。
そして、渡部の加入で楽しみなのが西武の“超重量打線”だ。『元祖おかわり』こと中村剛也、『おかわり2世』の異名をとる山川穂高と渡部が並ぶクリーンアップを見たいと思うファンは多いはずだ。体重100kgを超える日本人打者がクリーンアップに三人並ぶとなれば、プロ野球史上例を見ないことである。ラグビーではスクラムになった時にフォワードの体重合計を紹介することがあるが、仮に、西武の超重量クリーンアップが実現した時に他球団とどれだけの体重差があるか調べてみると、以下のような結果となった。
西武:合計317kg
山川穂高:103kg
中村剛也:102kg
渡部健人:112kg
ロッテ:合計300kg
マーティン:91kg
安田尚憲:95kg
井上晴哉:114kg
オリックス:合計283kg
吉田正尚:85kg
ジョーンズ:98kg
T-岡田:100kg
日本ハム:合計277kg
近藤健介:85kg
中田翔:107kg
渡辺諒:85kg
ソフトバンク:合計266kg
柳田悠岐:96kg
グラシアル:95kg
栗原陵矢:75kg
楽天:合計244kg
浅村栄斗:90kg
島内宏明:75kg
鈴木大地:79kg
西武に次ぐ数字となったのはロッテ。3人全員が90kgを超えており、114kgを誇る井上の存在も大きい。逆に最も少なかったのは楽天の244kg。島内、鈴木という本来はリードオフマンタイプである二人が70kg台という数字出ることが響いた格好だ。やはりこれを見ても西武の三人が揃った時の迫力は相当なものだということがよく分かるだろう。
ちなみに、2020年の登録情報では、体重100kg以上の日本人選手は22人で、最重量は前述した井上の114kgになる。球団別に見てみると、最も多いのが西武の5人で、中村と井上以外にも投手の中塚駿太(106kg)、高橋光成(105kg)、平良海馬(100kg)の三人が100kg以上となっていた。逆に最も少ないのは中日とヤクルトの0人で、中日の最重量は垣越建伸の96kg、ヤクルトの最重量は山田大樹(2020年限りで自由契約)の99kgとなっている。
もちろん体重が多ければ良いという単純なものではないが、中村、山川、渡部の三人に共通していることは、アマチュア時代からこの体形で結果を残し続けてきたということである。中村は以前「この身体で走って、守れるように鍛えてきた。昨日今日のデブとは年季が違うんですよ」とも発言しており、まだまだその力は健在だ。そして、渡部も決して打つだけの選手ではなく、高校時代にはショートを守り、大学でもサードをしっかりこなしているように、“動ける巨漢選手”なのである。ファースト山川、サード渡部、DH中村というそろい踏みも十分に現実的と言えるだろう。
他のスポーツと違う野球の良さの一つは、彼らのように一見アスリートとは思えない体格でも超一流選手になれることではないだろうか。太っている球児、野球少年に夢を与えるという意味でも、西武の“超重量トリオ”の活躍に期待したい。