「李明博・朴槿恵」の「恩赦カード」が突如湧いて出てきたタイミングと意味とは?

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塀の中に落ちる歴代大統領

 韓国与党・共に民主党の李洛淵(イ・ナクヨン)代表は1月1日、野党第一党が求める李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴槿恵(パク・クネ)前大統領の赦免を建議すると発言した。韓国では繰り返されてきた光景だが、その背景にあるものとはいったい何なのか? 韓国紙のベテラン記者がレポートする。

 韓国の歴代大統領は5年の任期を終えたあと、次々と検察の捜査を受けてきた。

 朴槿恵、李明博、盧泰愚(ノ・テウ)、全斗煥(チョン・ドゥファン)の4人は刑事事件で起訴されて実刑判決を受けている。

 盧武鉉(ノ・ムヒョン)は塀の向こう側に落ちる直前に自殺を図った。

 金泳三(キム・ヨンサム)は次男が逮捕され、金大中(キム・デジュン)は3人の息子が逮捕。大統領退任後は受難しか待っていないと言っても過言ではないだろう。

 現任者が前任者を塀の向こうに送り込む“政治報復”。この連鎖を断ち切る手段の1つに特別赦免がある。

 特別赦免は、司法や国会を介さず閣議審議だけで決められる大統領固有の権限だ。

 法治主義と三権分立に符合しないという論議はあるが、上述の通り、政治報復の連鎖を断ち切る重要な手段で、実際、歴代大統領では盧泰愚と全斗煥は赦免が下された。

 では今回、政権与党の代表が特別赦免を口にした動機は何なのか。

 野党第一党・国民の力は、「赦免は新年を迎え分裂を助長する文政権の国政運営から脱し、国民の統合に力を入れるメッセージだ」と評価した。

 文在寅大統領の度重なる失政で、与野党間の緊張が高まり、国民世論も分断されている 現状に鑑みれば、野党に譲歩するのは当然だと言いたいのだろう。

 しかし、文在寅大統領を無条件に支持する勢力が、政治思想を異にする大統領経験者2人の恩赦を受け入れるはずなどない。

 実際、強硬な「親・文政治家」で知られる与党の面々は李代表の赦免論に反発している。

文大統領は失うものの方が多い

 赦免論を発した李洛淵代表は3日、「青瓦台(大統領府)と意を通じた発言ではなく、党員の意向に従う」「恩赦を受ける当事者の反省が重要だ」と発言を修正、赦免論から一歩退くこととなった。

 これを党内の親・文勢力に押された結果と解釈するのは早計だ。

 政治家としての経験値が高い李洛淵代表は、反発を十分に予想しつつも、野党が求める前・元大統領の赦免を提起することで、世論を含めた反応を見たかったのは間違いない。

 しかし、いくら大統領に認められた権限とはいえ、赦免は、文在寅大統領がろうそく集会で唱えた民主主義を否定しかねない行為である。

 加えて、赦免権者の文大統領と相談せず口にするような類のものでもないし、当の文大統領が赦免で得るものはないどころか失うものの方が多い。

 赦免を実行すれば文大統領を盲目的に支持する親文派グループは与野党から孤立し、文大統領のレームダック化を加速させかねないからだ。

 実は、今月14日、最高裁が朴槿恵前大統領に対する最終判決を下すことになっている。むろん注目度は高まるし、「今に比べて前大統領は良かった」などといった比較報道も予想される。

 それは政権にとって更なる打撃となり、収束の仕方を誤れば来年3月の大統領選で政権交代を許すことに繋がる。

 そこで政権与党を預かる李洛淵代表は、確定判決の前に「赦免論」を持ち出したかったのだろう。

 次期大統領選を見据え、「文政権に対する国民の厳しい評価をしっかりと受け止めています」という国民におもねるメッセージを発信したかったのではないか。

 そういった「真摯な態度」の表明と共に、もう1つの狙いがあるように映る。

 1985年、当時の全斗煥大統領が特別赦免を政治戦略に利用した例を見てみよう。

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