ノブコブ徳井が「EXIT」兼近に「圧倒的な敗北感」を覚えた日 チャラ男が真摯に語った虐待問題
勝手に「心のお兄ちゃん」を自認
二人の連絡先も知らないし、ご飯を一緒に食べたこともない。二人の素性はファンよりもきっと詳しくない。それでも、「俺はEXITの心のお兄ちゃん」的な、そんな勝手なイメージを持ってしまった。
EXITがMCを務めている『アベプラ』(ABEMA Prime)というニュース番組にゲストで出た時も、不思議な緊張感を持って出演したのを覚えている。フォローしてあげよう、などというお節介な気持ちはなかったが、折角番組に呼ばれたのだから他の人が言えないような、角度のあるギリギリな意見を言ってやろう、と、少し意気込んでいたのかもしれない。僕の発言がネットを賑わせて、EXITとこの番組が話題になると嬉しいなと、心のお兄ちゃんというよりは熱心なファンのような、そんな気持ちで番組に臨んだ。
兼近の過去の話が世間に出た時も、僕にしては珍しくツイッターに自分の思うことを書き込んだ。占いのことがなかったとしても、過去を経た上での今現在の兼近と僕は付き合っている。もちろん兼近に限らずそうで、そんな気持ちからつぶやいたのだが、それ以上に強く指は己の意見を反映し、送信ボタンを押していた。
画面に少し、ヒビが入っていたかも分からない。
兼近の真理を突く言葉
しばらくして、新宿のルミネ the よしもとでEXITと出番が一緒になる機会があった。楽屋にも入らず廊下みたいなところで座り込んでいると、兼近が近付いてきた。
「最近どうだい?」
僕は照れ隠しなのか、そんなどうでもいい切り口で話しかけてみる。すると会話はいつの間にか、社会問題の話になっていた。
「いやー、でもりんたろー。って凄いよな、介護の仕事してるんだろ? 大変だろー? 俺には絶対できないなー」
僕が言うと、兼近は真面目な顔で「そんなこともないですよ」と返してきた。
「介護の仕事って、ある意味仕事って割り切らなきゃいけないと思うんですよ。今日伝えたことがまたできない、今日明日どころかいつまで経ってもできないかもしれない。あーなんでなの? こんなに自分は頑張ってるのに!って、そんなことが当たり前のように起こると思うんですよ」
金髪の青年は滔々と喋っていた。
「そこでいちいち腹を立てることなくいたり、良くならない状況を上手いことスルーできたりするためには、ある意味の冷たさっていうか、冷静さが必要だと僕は思うんです。そこが、りんたろー。さんにはあって、それがきっとちょうどいいんだと思うんですよね」
僕は兼近をつい二度見してしまった。年下との何気ない会話で、ここまで虚をつかれたのは初めてだった。なるほど、確かに。激しくそう思ったが、プライドなのか恥ずかしさなのか、その感情表現もうまくできぬまま、りんたろー。の話から、兼近の話にすり替えた。
「か、兼近もすごいよな、ベビーシッターのアルバイトやってるんだろ? 大変だろ、子供って」
「そんなことないですよ」
僕の場つなぎの一言は、金髪に一蹴される。
「僕、子供好きですし、この子たちの未来のために少しでも……、って思ったら、多少のしんどいことや面倒なことにも耐えられるんです。逆に、僕には介護の仕事はできないと思います。愛を与えすぎちゃって、その見返りがないことに勝手にイライラしてしまうかもしれませんし。徳井さんも、そうなんじゃないですか?」
はい、全くその通りです。心の中で答えた。
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