ノブコブ徳井が「EXIT」兼近に「圧倒的な敗北感」を覚えた日 チャラ男が真摯に語った虐待問題
平成ノブシコブシ徳井健太がお笑いについて熱く考察する『敗北からの芸人論』が2月28日に発売されます。
今回はその中の一編「日本のしょうもない価値観を変える――EXIT」をお届けいたします。
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「相方の不祥事」で解散した者同士のコンビ
今、飛ぶ鳥を落とす勢いのお笑いコンビといえば、EXIT。これはもう間違いがない。ただ面白いだけじゃなくて、ネットを通じて若者も巻き込んで、グツグツの話題沸騰状態だ。
業界関係者の中には、彼らの芸風についてどうのこうの言う人も少なくないが、この「若者を巻き込む」というのはとても大事だと思う。
新たな価値観を持った世代。いや、世代というのは失礼か。世代のせい、世代のおかげではなく、彼ら二人が歩んできたこれまでの道のり、そしてそれによって築かれた人生観が、今の日本を変えるほどの勢いを生んでいるのだろう。
りんたろー。と兼近大樹。彼らはもともと別々のコンビだった。過去なんてどうだっていいが、どちらのコンビも将来を有望視されていた。しかしどちらも相方の不祥事により、消化不良のままに解散。この先一体どうなるのか……と思い悩む者同士で、コンビを組むこととなったという。
話は少し逸れるが、僕がこの本を書くにあたり一番大事にしているのは、その人が「絶望」を知っているかどうか。毒の沼地で溺れ、足搔き、でも、そこからさも当たり前かのように這い上がり、さらに上へ上へ進もうとする人。
「憂い」とも言うのだろうか。最近の言葉で言うのなら、「エモい」なのかもしれない。そういった傷だらけの芸人さんが大好きだし、心底尊敬できるし、応援している。
第7世代と呼ばれる人たちはまだまだ若い。それぞれが苦難や困難を乗り越えてきたとは思う。けれどEXITはそのさらに先の「絶望」を乗り越えた、と僕は思っている。
そもそも彼らに出会ったのは、2018年。彼らがライブシーンでちょこちょこ有名になり出したくらいの頃だ。りんたろー。とは前のコンビの頃から、ライブで一緒になることはあった。楽屋で話したこともある。けれど兼近とは顔も合わせたことがなく、「えらい華のある奴がいる」と耳にするくらいのものだった。
そんな二人とEXITとして初めて接したのは、ヨシモト∞ホールという若手がメインで出演する劇場で、僕ら平成ノブシコブシがMCをやった時のことだ。
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