「韓国拘置所」入所者の半数が「コロナ感染」という地獄と「コロナ自殺・死産・医療崩壊」

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他の拘置所などに持ち込んで

 12月5日に2人目の感染が確認されたが放置し、同月18日になってようやく、入所者全員のPCR検査を行った。

 12月27日には、収監中の“グッドモーニングシティ分譲不正事件”の主犯の受刑者(66)が新型コロナウイルス感染症により死亡した。

 この受刑者はソウル東大門の大型ショッピングモール、グッドモーニングシティの代表だった2003年に、ショッピングモールの分譲代金を横領した容疑で逮捕。

 取り調べを担当した警察官に賄賂を渡して事件のもみ消しを依頼し、その後の逃亡中に捜査状況を知らせたソウル地検の職員に謝礼金を渡すなどの容疑でさらに逮捕起訴され、懲役10年の刑が下った。そして服役後に別の事件で有罪となり、収監されていたのだ。

 そういった“著名な”収監者が亡くなったことも影響してか、感染拡大に危機感を抱いた東部拘置所は、感染者と非感染者の部屋を分けることにした。

 遅きに失した感は否めないのだが、その後の手法は極めてズサンなものだった。

 感染者や濃厚接触者と同部屋であっても、コロナ陰性の判定を受けた約200人の収監者は、講堂に集められたうえで他の棟に移されたというのだ。

 陰性判定を受けた後も感染者と同室で寝泊まりし、また講堂に長時間押し込まれることになった収監者が感染し、非感染者に割り当てられた部屋にウイルスを持ち込む可能性は考えなかったようだ。

 感染拡大が止まらない東部拘置所は、次に収監者を他の拘置所や刑務所に分散させることにした。

 しかしそれも奏功せず、負の連鎖を断ち切ることはできなかった。

 東部拘置所で陰性の判定を受け、ソウル南部教導所(刑務所)に移送された85人のうち16人に感染が確認され、江原北部教導所に移送された収監者からも感染が確認されるなど、5箇所の拘置所と刑務所に感染が広がった。

 法務部は結局、感染者345人を慶北北部第2刑務所に移送し、治療に当たることにした。

 そこは重犯罪者を収容する刑務所のため、独房に感染者1人1人を隔離して治療できるからだ。

 問題はようやく解決に向かうかに見えたが、さらに難題が降りかかってきた。

職員の休職届と辞職届

 法務部が12月30日に、慶北北部第2刑務所に感染収監者を移送すると発表したところ、刑務官8人が育児、家事、病気を事由に休職届を申請し、2人が辞職願を提出したのだ。

 第2刑務所に勤務する刑務官250人は、収容された感染者が完治して移監されるまで「レベルD」の全身防護服を着なければならず、また刑務所内の施設や外部の研修施設に隔離され、外部との接触は禁止される。

 さらに3週間の勤務を終えた後も2週間の隔離生活を余儀無くされる。

 当局は、休職を申請した職員を説得するが、さらにそういった職員が増える可能性もあり、人員不足が懸念されている。

 拘置所や刑務所を所管する法務部の秋美愛(チュ・ミエ)長官は、東部拘置所が新たなクラスターとなっている間、文在寅大統領の側近であるタマネギ男こと曺国の捜査に取り組んだ尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の排除に没頭していた。

 秋長官は11月24日に尹総長の懲戒を請求し、12月16日に停職の議決を行った。

 収監者が死亡し、丁世均(チョン・セギュン)首相が中央災難安全対策本部会議で「政府が直接管理する施設で、大規模な集団感染が発生し、申し訳ない」と謝罪した後、秋長官はようやく拘置所を訪れ、現状を確認したのである。

 韓国政府は11月13日以降、地下鉄やバス、またカフェ、レストラン、大型ショッピングモール、デパートなどでマスクを着用しない利用者に10万ウォン(約9500円)、施設運営者には最大300万ウォン(約28万4000円)の罰金を科すが、拘置所内は最初の感染者が確認される前まで、収容者にマスクを支給しなかった。

 秋美愛法務部長官はもとより、拘置所の責任者に罰金が科されたという報道はない。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月8日掲載

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