「運命の人」だから妻子を捨てて再婚したのに… アラフィフ男がW不倫の末に見た現実

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晴れて一緒になるも…

 彼女の気持ちがわかったので、彼はとにかく必死に仕事をした。仕事で評価を得られれば、あとで私生活がバレたときも誰かが助けてくれるのではないかと考えたからだ。実際、彼の仕事ぶりは会社に高く評価された。

「そのころ再度、妻の立場が会社内で復活したみたいなんですよ。息子ももう成人していたし、僕が離婚を切り出したら妻はあっさり承諾しました。どうやら、つきあっていた男がいたようです。彼女のほうは揉めましたが、最終的には義母が味方してくれた、と。夫のモラハラは母親から見てもひどかったようです」

 今から1年数ヶ月前、ふたりは晴れて一緒になった。彼女は部署を異動になったが、懲罰的な意味合いではなかったようだ。ふたりとも密かに離婚してはいたものの、きちんと再婚したことで社内で噂にはなっても非難はされなかったという。

「ただ、楽しかったのは再婚して何ヶ月かでしたね。僕は彼女が自立している女性だと思い込んでいたんですが、実はかなり息子に依存していたんですね。そして彼女の義母は彼女に依存していた。僕が忙しかったので、彼女は前夫がいないときを見計らって、義母と息子がいる元の家に入り浸っていたんです」

 コウヘイさんもなるべく時間を作って彼女と一緒にいるように心がけたのだが、恋愛しているときとは違って結婚後は彼女の快活さが失われていった。再婚したことを後悔しているのかと尋ねると、「後悔はしていないけど息子が恋しい」と彼女は泣いたという。

「ところが息子のほうはわりとあっさりしていて、食事に誘ったら来てくれてふたりで会ったんです。『アルバイトをしてお金を貯めているんです。貯まったら少し世界を見たいと思っている』と言っていました。しっかりした子でしたね。ミカにそう言ったら、『あの子はまだ子どもよ』って。母と息子の感覚は違う。彼女が再婚したから息子は解放されたのかもしれない。そうなると僕の存在価値はどこにあるんだと考え込んでしまったんです」

 再婚したものの、妻は息子のことばかり考えている。大人の男女としていい夫婦になりたかったコウヘイさんと、別の男性を夫にしたかっただけで心は息子に占められている妻。そんな図式が見えてしまった。

「僕は現在、コロナの緊急事態宣言以前と同様に出社しています。彼女は今も週に1、2度の出社です。毎日、つまらないらしくて、息子を呼んでいいかというのでいいよと言ったのですが、息子に断られたようです。在宅といっても仕事をしなければいけないんですが、仕事への熱意もなくしたみたい。なんのために離婚して再婚したのか、急に魅力が失せた彼女にがっかりしています」

 恋だったから燃えたのかもしれない。結婚はまた「日常生活」の繰り返しなのだから。どんなに運命の人だと情熱をもっても、一緒になれば日常生活に埋没していってしまうものなのではないだろうか。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月6日掲載

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