テコンドー協会内紛から1年 金原昇元会長は「協会に未練はない。今後は恋に生きる」

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道場が入るビルを丸ごと1棟所有する松本の「不動産王」

 一方、“復権疑惑”を指摘された金原氏はどう答えるのか。地元、長野県・松本市を訪ねると、本人が駅まで迎えてきてくれた。そのまま駅から徒歩2分ほどの彼が所有する道場で話を聞くことになったが、金原氏は道場が入るビルを指差し、こう言った。

「ここは丸ごとウチの会社のものですよ。ほかにも市内に、いくつも不動産を持っています」

 松本で“不動産王”と呼ばれている金原氏の羽振りは良さそうだ。道場に入るとまず、敷いてあるマットについて語り始めた。

「これは一昨年9月に千葉で世界選手権をやった時に協会が買ったものです。2枚で数百万円以上はするんじゃないかな。試合が終わって保管場所に困っているようだったので、うちで引き取らせていただいたのです。バラエティ番組に出演していた時期もありましたが、出演料は協会に寄付してきました。辞める際、今後はお茶汲みから協会を支えたいと言いましたが、本当にその気持ちでやっていますよ」

 そして、

「高橋さんが、僕が復権を狙っているって言っているって? ないない」

 と笑って疑惑を否定した。

「今はここで一道場の主として、子供たちと触れ合うのが癒しになっています」

 道場経営は、ほぼボランティアだという。小・中学生の子供を中心に30人くらいの練習生が通うが、会費は週2回で月3000円。

「一緒に試合に行って、勝った負けたって一喜一憂するのが楽しくてね。子供にも自尊心があるでしょ。負けても褒めてあげる。あの蹴りはすごかったぞって。そうやって自信を持たせてあげて、逆に、勝った子には負けた子の前では謙虚になれって諌めてやる。子供たちに武道を通して生きる道を指導していくのが好きで、この道に入ったんです」

拳銃事件は事実。「3発、当たったよ」

 反社会的勢力と名指しされた後も、周囲の見方は変わらなかったという。

「僕のために泣いてくれた道場生がいたって後で聞きました。実際、あの時はパワハラだ、反社だって言われ続けましたが、僕は何一つ道を外れたことをしたとは思っていない。拳銃で撃たれたことは、すでに認めた通り事実ですよ。30年くらい前かな、夜の9時頃、このビルの前に車を停めて入ろうとした時に、目の前に拳銃を持ったヒットマンが現れた。5発撃たれて、うち3発が腕、腹に当たった。でも、撃たれたのは反社だからではなくその逆で、警察と一緒になって暴力団を追放しようという運動をやったから」

 ただ、一度火がついた「反社疑惑」の勢いが収まらず、「パワハラ疑惑」なども加わり、最終的には退任することになった。

「敗北感はなかったですよ。お金のためにも名誉のためにやってきたつもりはない。テコンドーの普及のため、誠心誠意やってきましたから。ガバナンスの問題についてもいろいろと指摘を受けましたが、弁護士を雇って、ちゃんと透明性を持ってやっていましたから、僕が勝手に一存で協会を動かせるわけがない。よくああいう場面では、みんな“私の不徳の致すところで”って身を引いていきますが、正直、僕にはそんな気持ちはさらさらなかった。確かに東京五輪は目の前にあったので、それまではという思いはありました。ただ、それは流れだったから」

 むしろ、数年前から辞め時を探っていたという。

「ずっと僕が長く会長にとどまることで、新しい風が入ってきづらくなりますからね。2、3年前から周囲には、“僕のクビを高く買ってくれるスポンサーがいるなら、いつでも代わるから”と言っていました。あの騒動は、ちょうどいいタイミングだった。今も人事に関わっているとか、復帰に向けて水面下で動いているとか、とやかく言う人がいることは知っていますが、いちいち相手にしません」

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