「日本はなぜそんなことに?」 元特殊部隊員が明かす「海外軍人の驚愕」

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元海自特殊部隊員が伝える、自衛隊のリアル!(3/3)

 元海自特殊部隊員、伊藤祐靖氏の『邦人奪還~自衛隊特殊部隊が動くとき』は、北朝鮮にいる拉致被害者を、特別警備隊(海自特殊部隊)が救出するというストーリーとそのリアルな描写が話題だ。聞けば意外にも特殊部隊の世界はインターナショナルで、海外交流も多いとか。そのやりとりも存分に本作には生かされているが、海外の特殊部隊員は自衛隊についてどう思っているのか? 元日本マイクロソフト社長の成毛眞氏と東工大教授(メディア論)の柳瀬博一氏が伊藤氏に切り込んだ。

(2020年9月25日に「下北沢B&B」で行われたトークライブ「自衛隊特殊部隊が動くとき」より)

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柳瀬博一(以下柳瀬) 伊藤さんの前作『自衛隊失格』(新潮社)は生い立ちから特殊部隊の創設、自衛隊退官までつづった自叙伝でしたが、今作は「ドキュメント・ノベル」の形をとっています。ノンフィクションでなく、リアリティー満載ながらもフィクションの形をとったのは、どんな気持ちの変化があったんですか?

伊藤祐靖(以下伊藤) 自衛官の困惑をみなさんに疑似体験してほしい、それに尽きます。フィクションという形で守秘義務の壁を越えることで、特殊部隊の隊員が抱える困ってしまうこと、その「困惑」が少しでも伝わればと筆をとりました。

柳瀬 「困ってしまうこと」、ですか。

伊藤 はい。自衛隊の仕事は「国民の生命財産を守る」とよく言われています。でも、現場に身を置くとそれだけでは対処しきれない事態に直面するんです。「国民の生命財産を守る」で全てを解決できるかというと、残念ながら解決できないんです。

10人のために20人死ぬ、それでも救出するのか

柳瀬 『邦人奪還』では、北朝鮮での日本人の拉致被害者の居場所がわかり、彼らを救出する展開になります。それは「奪還」であり、実行する特殊部隊の行為の意味が問われます。その行為は戦闘行為なのか、自衛行為なのか。これまで散々議論されてきた話ですが、非常に微妙な線をまたがねばならない現場の声が描かれていますね。

伊藤 はい。邦人を奪還するというのは非常に難しい作戦です。困惑というのは、一言で言えば救出対象者数よりも、救出する側の犠牲者が多くなることを覚悟しての作戦は矛盾しないかということです。自衛隊員も国民です。「国民の生命財産を守る」を厳守するとなると、奪還したところで、隊員の犠牲がほぼ確実ですから国民の生命の数はマイナス、財産としても作戦を決行すれば、血税を投入しますので成功したとしてもマイナスになります。つまり、意志に反して日常を奪われ連れ去られた自国民を連れ帰るという、国家として重要な任務であっても、自衛隊の仕事が「国民の生命財産を守る」では整合性が取れなくなってしまう。だから「困ってしまうこと」なんです。

成毛眞(以下成毛) 助けないといけない人が10人いて、救出することで助ける側の人が20人死んだら「10マイナス20」で国民の数は10人マイナスなのになぜ助けるのかという議論に確かになりますね。ただし、「だったら、やめます」とはならないから、それも「困ってしまう」ことになってしまう。この議論は、結局、国とは何か、国に何を求めるかという議論になりますよね。そこに国としての姿勢なり、理念はあるのかという……。

伊藤 そうなんです。国家としての理念はあるのか。それが明確にないから、現場は困ってしまう。

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