年上の既婚女性に恋したアラサー男 “対等”を求めて結婚し、ついにW不倫が始まった

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「既婚と独身じゃ立場が違う」と言われて

「恋愛」は対等な立場でないと成立しづらい。ふたりとも既婚であるダブル不倫が増えた背景には、そういう価値観もあるのではないかと思う。そして実際、結婚したからこそ好きな女性と関係をもてるようになったと話す男性がいる。

 ジュンイチロウさん(仮名=以下同・35歳)は、4年前に現在の会社に転職した。そのとき指導してくれた先輩社員が6歳年上のマチコさん(41歳)だ。

「当時、彼女はすでに結婚していて一児の母。家庭の話はほとんどしなかったけど、一緒に営業で外回りをしたとき、子どもを見つめる目がやさしかったのを覚えています。仕事には本当に厳しくて僕も鍛えられましたが、一方で、いいところを見つけると必ず褒めてくれる。僕も知らず知らずのうちに、マチコさんに褒めてもらいたくてがんばるようになりましたね」

 最初の2年間は仕事を覚えるのに必死だった。転職してきた人間は即戦力として期待される。と同時に、古い企業体質ゆえ「生え抜きじゃないものね」という視線を感じることもあった。だがマチコさんはそんな気配りをいっさい見せなかった。

「純粋に仕事への取り組み方や成果を評価してくれた。彼女自身、優秀なのに出世していくのは同期でも男性ばかり。それでも腐ってはいませんでしたね。いつか会社が変わるよう、淡々といい仕事をしていけばいいと呟いたこともあります」

 小柄ながらパワフルに人を統率していくマチコさんに、彼はいつしか惹かれていった。無意識のうちに、少しずつ……。そして気づいたときには、彼女への思いで身も心もパンパンに詰まっているような状態になっていた。

「苦しくてたまらない。口を開いたら彼女への思いがあふれてしまう。でも僕らは仕事上、先輩と後輩という立場。何よりマチコさんは僕みたいな若造を恋愛対象にするはずがない。それ以前に彼女は結婚しているわけだし。そんなことばかり考えていました」

 恋をして胸が痛むというのは本当ですよ、と彼は真顔で言った。恋する気持ちが強くなっていくと、彼女の姿を見ただけで、あるいは少し思っただけで胸がしくしく痛むのだという。

「ハートというのは存在するんですよ、心。脳と心は別なんだと実感しました」

 ことの真偽はともかく、彼はそれを痛感した。その思いを抱えたまま仕事を続けることがだんだんつらくなっていった。

 ある日、部署の飲み会があった。ちょうど一緒にむずかしい仕事を終えたばかりだったので、「二次会、こっそりふたりで行こう」とマチコさんに誘われた。彼女はあっけらかんとそういうことを人前で言うのだ。「どこがこっそりだよ」と同僚たちに笑われながら、マチコさんに促されて、ふたりで目の前のバーに入った。やましいことはないというマチコさんの意思表示なのだ。

「そのときちょっと飲み過ぎて酔ってしまい、マチコさんに自分の気持ちを漏らしてしまったんです。好きで好きでたまらない、つらい、と。彼女がどんな表情をしていたかは覚えてないんですが、『既婚と独身じゃ立場が違う、無理よ』と少し突き放すように言われた言葉が心にグサッときました」

「これで立場は対等ですよね」

 翌日からはまた、なにごともなかったかのように仕事が続いた。彼女から離れて単独でおこなう仕事も増えていったジュンイチロウさんだったが、それでも常に彼女は彼の支えだった。

「その1年後に僕、結婚したんです。たまたま大学時代の後輩に再会してつきあうようになって……。まじめでいい子だし、おっとりしている。家庭をもつならこういう女性がいいなと思ってプロポーズしたらトントン拍子に話が進みました」

 その裏に、自分も既婚者にならなければマチコさんとはつきあえない。そんな思いもあったのかもしれない。彼は「当時はそう思っていなかった」と否定するが、潜在意識にはじゅうぶんありそうだ。

 彼は真っ先にマチコさんに結婚を報告した。

「彼女は一瞬、驚いたような顔をしましたが、『おめでとう』と満面の笑みでした。その瞬間、『これで立場は対等ですよね』と言ってしまったんです。ああ、そうか。結局、僕は自分が結婚すれば立場は同じだとは思っていたんでしょうね。ただ、そうなるために結婚を決めたわけではないんですが……。それじゃ妻にあまりにも失礼ですから」

 結婚したのが2018年の11月。そして翌春、妻の妊娠がわかった。ところが妻はつわりがひどく、実家から仕事に行くと言って、ジュンイチロウさんとの住まいから出て行ってしまう。

「妻の実家から職場までは電車で2駅。すごく近いんです。それに妻は『つわりで苦しんでいるのをあなたに見せたくない』と。古いタイプの女性なのかもしれないけど、けなげすぎて……。僕ができることは何でもやるから、とひきとめたんですが、実家のほうが彼女もリラックスできるなら、それでもいいかなと。僕が会いに行けばいいわけですし」

 結婚しているのにひとり暮らしの独身気分。しかも妻は妊娠中。一方、ずっと前から彼のマチコさんへの思いは、沈静化しつつも基本的には変わっていない。こんなに状況が整ってしまっては、彼の中でマチコさんへの情熱が燃え上がっても不思議はない。

「僕が結婚してから、ふたりで飲む機会は激減していました。マチコさんが遠慮していたんでしょうね。僕もあえて誘わなかった。でももう今しかない、最後のチャンスだという気がしました。ここを逃したら、もう二度と彼女と男女の関係にはなれない。焦燥感だけがありました」

 彼は意を決して、マチコさんを食事に誘った。そして二軒目のバーで必死に口説いた。結婚してあなたへの気持ちがおさまるかと思ったがおさまらない。とにかく一度でいい、あなたのすべてを見せてほしい、と。

「あんまり女性を口説いたことなんて、ないんですが、このときばかりは必死でした。なぜか最後のチャンスかもしれないという思いが強かった」

 どんなときも自分の意志をはっきり示す彼女が黙り込んでいた。彼は彼女を促し、店を出るとホテルへとタクシーを飛ばした。ダメ元で都心のホテルを予約していたのだ。

「広くてきれいな部屋に入り、窓から夜景が宝石のように光っていました。彼女は思わず、わあっと歓声を上げていましたね。そこを後ろからとらえて、本当にずっと好きだったと泣きそうになりながら言ったんです。僕がこれほどに感情を動かされたことはなかったかもしれない」

 その瞬間、彼女の体から力が抜けた。

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