「箱根駅伝」優勝予想…それでも「駒沢大」が前回覇者「青山学院大」に勝てる理由とは?

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 大本命は不在。今年度の箱根駅伝を予想するのは例年以上に難しい。前回覇者の青山学院大、2大会前に初優勝した東海大、前哨戦の全日本大学駅伝を6年ぶりに制した駒沢大までが3強と言われるが、全日本で3位と健闘した明治大を加えて4強と見る向きもある。ダークホースとして、地力のある早稲田大、東洋大がチャンスをつかむ可能性も否定できない。

 大混戦の様相を呈すなか、総合力で青山学院大の優位を認める監督は多い。12月10日に発表された16人のエントリーメンバーには、前回の優勝を経験した5人の名前がある。3強の一角を占める駒沢大の大八木弘明監督も「箱根では青学は強い。選手層が厚いですから」と警戒を強めていた。

 ただ、客観的に見れば、最も勢いがあるのは駒沢大だろう。指揮官は箱根の目標を聞かれても「最低3位以内」と謙虚な姿勢を崩そうとしないが、総合優勝を視野には入れている。

 流れに乗ったときの強さは伊勢路(全日本大学駅伝)でも証明済みだ。日本人学生ナンバーワンの強さを誇る2年生エースの田澤廉まで粘ってタスキをつなぎ、優勝テープを切っている。アンカー勝負に持ち込んで、宿敵の青山学院大、東海大を抜き去る展開は狙い通りだった。箱根でも大駒の区間配置には心を砕く。「エースだからと言って必ずしも2区ではない」。大砲を生かすも殺すも、前後の区間を走る選手たち。準エースの働きぶりには期待を寄せる。

「キーマンは小林歩(4年)、鈴木芽吹(1年)」

 カギを握る2人は補欠へ。第97回大会は当日変更できる人数が計4人から6人に拡大されており、12月29日に発表されたメンバーからガラリと変わる可能性もある。当初、2区候補だった小林が3区に配置される可能性は十分に考えられる。勝利のシナリオは、すでに指揮官の頭にある。

「往路優勝すれば、そのままの流れで総合優勝したい」

 一抹の不安を抱えていた復路の選手層も厚くなっている。伊勢路に出走しなかった8人以外が、11月以降のトラックレースで好タイムを出しているのは好材料。特に1年生の成長は目覚ましい。10000メートルで白鳥哲汰が28分14秒86、青柿響が28分20秒42をマークし、チーム上位の記録を出した。故障の影響で全日本を回避した主将の神戸駿介(4年)も復路区間の準備に余念がない。チームの上げ潮ムードもひしひしと感じている。「このメンバーなら優勝できると思っています」。10000メートルの上位10人の平均タイムは、出場チームの中でも最速の28分26秒81。

 強いて駒沢大の不確定要素を挙げれば、特殊な山区間。前回大会で5区を走った伊東颯汰は区間13位に沈んでいる。4年生最後も山上りを志願していたが、8区でのエントリー。候補は複数人いる。山の準備をしてきたという3年生の佃康平、そして監督が信頼を寄せるルーキーも上り坂の練習をしてきた一人。当日、鈴木が5区に名前を連ねても不思議はない。山下りの6区を含めて、ポイントとなってくる。

「山はなんとか乗り切りたい。区間4位、5位くらいで持ちこたえてほしい」(大八木監督)

 駒沢大がヤマ場となる山を越えたとき、13年ぶり7度目の総合優勝をさらっていく可能性は一気に高まるはずだ。

杉園昌之(すぎぞの・まさゆき)
サッカー専門誌の編集記者、通信社の運動記者を経て、フリーのスポーツライターに。陸上競技(主に長距離)、サッカー、ボクシングを中心に活動している。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月1日掲載

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