「噛み合わせ」のズレが歯周病、認知症の原因に 自宅でできるセルフ「骨格矯正」とは

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下がったほお骨の押し上げ

 ここからは実際に、噛み合わせの狂いを矯正していきます。矯正それ自体を行う前に、食いしばりの原因になっている咬筋をマッサージします。

 B.口を閉じ、歯を食いしばった状態で、あごの付け根、つまり顎関節の付け根を触ってください。すると硬い部分に指が触れると思います。咬筋の中心が出っ張っているのです。そこに手のひらを当てます。

 C.口を軽く開けた状態にし、指で円を描くようにマッサージをしていきます。この動作を30回ほど繰り返してください。咬筋の出っ張りが平らになるくらいの力を入れ、軽く押し伸ばすイメージです。

 続いて、咬筋のストレッチを行います。筋肉をゆるめるためには、マッサージとストレッチの両方が必要なのです。

 D.まず、下あごに両手のひらを両側から引っかけます。そうしたら口を開き、開いたところで手を引き下げます。続いて、下あごを前にグーッと押し出します。両手のひらで下あごを押し込んでから、少し下げるイメージです。この状態を10秒ほどキープしてください。

 E.寝た状態で行うストレッチも紹介しておきましょう。仰向けになった状態で、指を2本、下の歯に引っかけて下に引きます。このとき指の力は、あごに力が入らない程度の軽さで十分です。そして、口を3ミリほど、指の力だけを使って軽く開きます。

 さきほど、就寝中の食いしばりを防ぐために、寝る前にあごをゆるめたほうがいい、と説明しました。このストレッチを就寝前に行えば、寝ながらの食いしばりや歯ぎしりの防止にもなるのです。

 ここからはいよいよ、噛み合わせのズレを矯正するための“本丸”に突入します。噛み合わせを狂わせているほお骨を押し上げ、左右の高さをそろえるための骨格矯正には、二つのアプローチがあります。

 まず、ゆっくり口を閉じたとき、先に上下の奥歯が当たるのが右側か、左側か、確認してください。そうしてもわからなければ、鏡に自分の顔を映して、左右どちらのほお骨がより下がっているか、確かめてください。左のほお骨が下がっていれば、下あごは右にズレています。

 F.確認できたら、最初にほお骨を押し上げます。下がっている側のほお骨に手のひらを当ててください。その際、右側が下がっていれば右の手のひらを、左側が下がっていれば左の手のひらを、下がっているほお骨に当てます。

 そうしたら、肘を反対の手で支えるか、テーブルにつくかして固定し、しっかりとほお骨を押し上げてください。口を開けたままの状態で押し上げるのがポイントで、気を抜かずに20秒ほど押し続けましょう。

 G.続いて下あごの左右へのズレを矯正します。下あごが右にズレている場合、左ほお骨に左の手のひらを当て、右のあごに右の手のひらを当ててください。口を大きく開き、下あごを左に押し込みます。軽く力を入れたまま、10秒ほどこの状態を保ってください。

 下あごが左にズレているという方は、手を逆にして行ってください。終わったら左右のほお骨のズレを鏡でもう一度確かめ、押し込みが足りないようであれば、同じ手順でもう1回行ってください。

 ちなみに、はじめに少しだけ触れましたが、ほとんどの方は左側のほお骨が落ちて、下あごが右にズレています。これは地球の自転の影響だと考えられます。

 さて、セルフ矯正が終わったら、奥歯を合わせてみてください。簡単な矯正を施しただけで、両方の奥歯が正しく噛んでいることを実感できると思います。とはいえ、いったんクセがついていると、すぐに元に戻ってしまうもの。マッサージとストレッチ、そして矯正を、毎日、根気強く続けることが大切です。

健康も美容も

 左右どちらのほお骨が下がっているか、わかりにくいという方のために、ほお骨の高さをチェックする二つの方法も伝えておきましょう。

 H.左右それぞれのほお骨の下に指を当て、顔を鏡に映して左右の高さを確認してください。案外、はっきりとズレが見てとれることが多いのです。

 I.もう一つは、歯のズレを見て確認する方法です。正中線、つまり上の歯と下の歯の中心線がズレていれば、噛み合わせがズレている証拠です。正中線を指でさしてズレを確認してください。正中線に対して下の歯が右にズレていれば、下あごも右にズレているということです。

 私のクリニックを訪れる方の、おそらく90%以上は、噛み合わせが狂っていると思います。もっと言うなら、食いしばりが少しもない方や、ほお骨がまったくズレていない方は、ほとんどいないと言っても過言ではありません。

 元来、私はフェイスラインを整えるためにあごの矯正を始めました。仮に、あごのラインが右にズレているとすると、左のフェイスラインが大きくなってしまうので、そこを修正していたのです。つまり、最初は美容が目的だったのですが、施術を受けた方から「噛み合わせが良くなった」という声をたくさんいただくようになりました。

 J.デスクワークやスマホの使用で姿勢が悪くなり、噛み合わせが悪化する人が増えていたのでしょう。

 しかし、マッサージをすると顔の筋肉がゆるみます。その結果、食いしばりがなくなるというのは、理にかなっています。「楽になった」という声が数多く届いたのを受けて、噛み合わせの矯正術を確立していった、というわけです。

 いまでは、美容と噛み合わせの双方を意識して施術しており、多くの方に効果を実感してもらっています。これは、実は読者のみなさんにとっても、一挙両得につながる話です。というのも、フェイスラインが整うと、張っていたえらが小さくなるのです。

 えらが張る原因は、むくみもありますが、それ以上にあごの筋肉のこりが大きいのです。あごの筋肉は、こると表に膨らんでくるもの。ボコッと張り出し、あたかも骨が膨らんでいるかのように見えます。

 それを家にいながらお金をかけずに矯正し、男性なら精悍なマスクを、女性ならフェイスラインの美しさを手にしたうえに、からだは健康になるのです。噛み合わせのセルフ矯正、お得だと思いませんか。

清水六観(しみずろっかん)
美容矯正士。明大柔道部時代から数々の整体を学び、独自の理論による整体術を確立。体形が崩れる原因として骨盤のゆがみに着目した。骨格矯正と健康指導の「ろっかん塾」院長(東京都杉並区高円寺南4-27-18 6階、電話03-5929-7042)。日本美容矯正士協会理事長。

週刊新潮 2020年12月3日号掲載

特集「誤嚥性肺炎から認知症まで 万病のもと『噛み合わせ』のズレを自分で直せる『骨格矯正』」より

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