テーマは「女による女のためのドラマ」 2020年の良質な作品を振り返る
お飾りや見せかけのヒロインではなく
今年も主要なものは全て見たライター・吉田潮が振り返る「2020年、良かったドラマ」。
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2020年はとんでもない年だった。
各局で軒並み撮影中断や放送延期に追い込まれ、新作ドラマは厳しい状況に。
結局「愛の不時着」(Netflix)と「半沢直樹」(TBS)が猛威を振るって、すべての話題をかっさらった。
その後はドラマではなく、漫画&アニメ「鬼滅の刃」にすべての関心をもっていかれ、ぺんぺん草も生えねー状態という印象だ。
確かに私自身もNetflixやAmazonプライムに逃げた。なぜかゾンビモノばかり観た。たぶん「感染症が引き起こす疑心暗鬼の正体」が現実と地続きだからかな。
韓国のゾンビ時代劇「キングダム」にハマり、「ウォーキング・デッド」はHuluにお試し加入してまでシーズン10まで一気見した。
ゾンビ疲れした後は「アンという名の少女」や「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」で口直し。パワフルな女たちに癒され、励まされ、力をもらった。
とはいえ、良質な国産ドラマもあったし、演技で魅了した俳優もたくさんいた。生活の基盤を揺るがす災禍で、すっかり記憶の彼方かもしれないが、2020年は地味に面白い作品も多かった。
まず、連ドラ。
選んでいくうちに、ひとつのテーマが浮かんだ。完全に「女による女のためのドラマ」である(悪いな、男どもよ)。
今を生きる女性が、胸に秘めた思いや飲み込んできた愚痴、ためこんできたストレスをちょっぴり吐き出せるようなフックのある作品。
お飾りや見せかけのヒロインではなく、地に足つけて自分の言葉で語ることができる女性像が含まれていた作品でもある。
久々に胸が締め付けられる朝ドラ
●「スカーレット」(NHK)
主演の戸田恵梨香にご祝儀もこめて。貧しい境遇から持ち前のド根性と好奇心で、陶芸家の道を突き進んだ女性の物語。
夫役・松下洸平との掛け合い、そして関係性の変化も興味深かった。朝からイチャコラ胸キュンな場面もあれば、すれ違う仕事の哲学と人生観、そして覚悟と決意の別離まで。
必ず生じる夫婦の距離もきっちり描いていたので、久々に胸が締め付けられる朝ドラだった。
●「知らなくていいコト」(日テレ)
政界・財界・芸能界の醜聞を狙う週刊誌の世界で、出自がちょいとワケありな敏腕記者を吉高由里子が演じた。
母(秋吉久美子)の突然の死、彼氏(重岡大毅)の暴挙、元彼(柄本佑)との不倫、殺人で服役した男(小林薫)が父親ではないかという疑惑。
精神的に追い込まれつつも、えげつない世界に骨をうずめる覚悟と芯の強さを見せた。たぶんモデルは新潮じゃなくて文春のほうだな。
●「伝説のお母さん」(NHK)
ドラゴンクエスト的なRPGの世界で、伝説の魔法使いを演じた前田敦子。魔王討伐に選ばれるも問題は山積み。
家事も育児も一切しない夫、待機児童が多くて入れない保育園、ワンオペ育児の限界……。
ファンタジーの世界に「働く女(母)の怒りと不満という現実」を盛りこんだシュールなコメディだった。
人間を脅かす魔王役の大地真央が実は母たちの救世主という皮肉が効いていた。
●「捨ててよ、安達さん」(テレ東)
安達祐実が本人役を演じ、人気子役という運命を冷静に振り返るドラマ。
毎回モノを捨てる断捨離啓発ファンタジーなのだが、捨てられるモノが擬人化されて登場する仕掛けが面白い。
安達の傍らにいる謎の少女(川上凛子)がめちゃくちゃ辛辣な毒を吐く姿も可愛かった。
女の人生というか、安達祐実の半生をともに振り返る貴重な体験。モノを捨てられない人の背景に思いを寄せた。
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