「慰安婦合意」から5年が経過 日韓関係の足を引っ張り続けた「中央行政機関」とは?
“女性家族部”は“慰安婦”で転換
日韓首脳が慰安婦問題の解決にグッと舵を切ってから5年。その後、時計の針は逆回転したかのように、この問題は迷走を極めている。それを助長したのは慰安婦支援団体「正義連」であり、主導してきた尹美香議員とされてきたが、もう1つ、国家機関の存在があったのだ。(前回から続く)
金大中大統領率いる左派政権は2001年、女性の人権を保護し、出産・養育を支援して幸せな家庭環境を造成する目的で中央行政機関「女性部」を新設した。
韓国社会に蔓延していた男尊女卑と女性差別がなくなる期待が高まったが、女性部は女尊男卑の政策を乱発、男性に対する差別を招いて、男女間の葛藤を助長させるという皮肉な結果を招いた。
世界経済フォーラムの「世界性格差報告書」で、2006年に92位だった韓国の性格差は、2007年には97位、2008年は108位、2009年には115位と年ごとに下がっていった。
女性の人権を向上させた実績もなく、言葉は悪いが役にあまり立つことはなく、大統領の側近を長官に就任させるお飾りの機関に過ぎないという批判が起きたのも当然だろう。
その女性部は2010年、「女性家族部」に名称を変更し、慰安婦に関わる国の事業を担うことになった。
1993年、韓国政府は日本帝国主義時代の従軍慰安婦に生活費や住宅などを支援する目的で法案を制定しているのだが、その主務官庁として韓国の“聖域”である慰安婦支援を所管することで、命脈を保った格好だった。
もっとも、今年5月、「正義連事件」が起き、論争の渦に巻き込まれることになる。
正義記憶連帯(正義連)と尹美香議員の寄付金流用疑惑が広がると、女性家族部が国民の税金から莫大な補助金を支給し、さらに文在寅政権発足後、その支給額が大幅に増額したことが表面化。
女性家族部は2016年から今年にかけて、正義連と同団体の前身である挺対協に計16億1400万ウォン(1ウォン=0.094円)の補助金を支給した。
正義連・尹美香事件の"共犯"に
朴槿恵政権下の2016年には1600万ウォンだったが、文在寅政権が発足した2017年以降急増して、19年には2016年より46倍以上も多い7億4708万ウォンが流れた。
一方、正義連は補助金の内訳を4年間公示していなかったことが判明。
女性家族部は、慰安婦の治療や学術行事、慰安婦碑設置、施設運営などの目的で補助金を支給したが、正義連が行った税務申告は5億ウォンのみで、残りの使途は不明である。
女性家族部は補助金が目的通りに使われたかどうかを監督・点検する義務を果たすことなく、毎年補助金を支給し続けた。
今年5月、正義連と尹美香議員の寄付金流用疑惑が明るみに出たが、女性家族部は正義連に5億1500万ウォンの補助金を支給した。
女性家族部が所管する「慰安婦被害者生活安定支援・記念事業審議委員会」には15年以降、尹美香議員をはじめとする正義連の理事が参加していることも明らかになった。
支援対象となる慰安婦の選定と支援事業の決定に、補助金を受ける側の理事が影響を及ぼしていたことになる。
保守系野党は女性家族部に対し、直近10年の審議委員会の詳細なリストと正義連の「慰安婦被害者支援事業報告書」を提出するよう要請したが、女性家族部は拒否。「資金流用の共犯」という非難が起きているのだ。
今年7月には、青瓦台(大統領府)のホームページに女性家族部の解散を要求する請願が提出され、10万人以上が同意した。
具体的には、「女性家族部は男性嫌悪で、逆差別の制度を作り、国家予算を浪費した」「正義連事件での失態は看過できない」といった声があがっている。
また、保守野党がリサーチ会社に依頼して行った最新の調査で、国民の10人に6人が女性家族部の解散か縮小を望んでいた。
その保守野党の次期大統領選挙候補の一人である元国会議員、劉承旼(ユ・スンミン)氏は、同部を解散させる公約を掲げている。
そんな声にもかかわらず、女性家族部には毎年、1兆ウォンを超える予算が配分され、来年は今年より5%多い1兆1264億ウォンとなる。
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