愛犬や愛猫は大丈夫? 動物病院の調剤がペットの健康被害を招くというヤバい話
看護師は調剤可能?
コンプライアンス(法令遵守)という観点からも、動物病院における調剤の現場は問題点がある。
先に動物にも人間用の薬が調剤されることを紹介したが、必要とする分量は全く違う。動物病院に行ったことのある方なら、人間用の薬を半分に割ったり、すりこぎで粉々にしたりしているのを見かけたことがあるのではないか。
人間用の薬をペット用の量に調整していたのは、誰だっただろうか? ペットを診察した獣医師か、それとも動物看護師か?
「法律上は薬剤師か、診察した獣医師しか、薬の調剤はできません。ただし、薬剤師を雇っている動物病院は極めて少数です。実際の現場では、薬を割ったり潰したりするのも、診察した獣医師しかできないのです。同僚の獣医師ですら、自分が診察していないペットの薬を調剤したら法律違反になります。まして動物看護師なら問答無用で違反です」
ペットの医療現場における治療水準を向上させようと、19年6月に愛玩動物看護師法が公布されており、22年5月の施行が決まっている。
農林水産省は9月28日、愛玩動物看護師カリキュラム等検討会を開催した。動物看護師の養成に必要なカリキュラムなどを、専門家に話し合ってもらう場だ。
専門学校でも誤解
この日、治療を受けたペットに薬を調剤するのは原則、薬剤師であり、動物看護師の業務内容には含まれないことが確認された。
「動物病院における調剤の現状は、コンプライアンスの観点からも問題でしょう。率直に言って、日本全国で多くの動物病院が調剤に関する“グレーゾーン”を放置したまま、日々の診察に当たっています。これが健全な状態でないことは言うまでもありません。動物看護師の国家資格化を機会に、是正が求められています」
だが、動物看護師を育成する専門学校でも、法令を間違って解釈している学校もあるという。
「一部の専門学校は公式サイトで、『調剤実習』を紹介しているのです。動物看護師が調剤に関わることは法律で禁止されていることを、知らない専門学校もあるのです。改めて、この問題の根が深いことを痛感させられます」
日本は今やペット大国。正しい飼育方法が広まったことなどもあり、特に犬と猫は長生きするようになった。それ自体は喜ばしいことだが、飼い主が終末医療に直面するケースも増加している。
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