10億円は諦めない……芸能人御用達の焼き肉屋「虎の穴」店主が語る“金銭トラブル30年”
30年前に焼き肉屋業に参入し、それまで注目されなかった「ハラミ」や「ホルモン」の価値を塗り替えたのが、『虎の穴』を経営する辛永虎(シンヨンホ)氏である。恵比寿の店には、藤原紀香や石田純一、秋元康、小山薫堂など芸能関係者が足繁く通っているという。今でこそ経営は順調だが、焼き肉屋を始める前から抱える金銭トラブルがあるという。
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『虎の穴』には、毎晩のように芸能人やスポーツ選手が訪れる。辛氏は常連客である著名人の名前をあえて語ろうとしないが、藤原紀香や石田純一、巨人の高橋由伸前監督らは、ここの常連客だ。
辛氏がススめる一品は、ハラミ。焼き肉といえば、カルビとタン塩がメインで、内臓肉はわき役だった。そんな価値観を覆したのが辛氏だ。東京でいち早くハラミの旨さを広め、“放るもん”だったホルモンの地位を引き上げたという。
「30年前に焼き肉店を始めた時、カルビやタン塩のいい肉が新参者には入手できなかったのです」
と語るのは、辛氏。
「仕入れ先で残ったのがハラミやホルモンでした。ホルモンは、東京では台東区や葛飾区の下町の文化です。それを前面に打ち出そうと思いました。安くて新鮮なものが入手できたので、お客さんに勧めたのです。最初は、『内臓肉はちょっと』と断られましたが、かなりゴリ押ししてハラミを食べさせたところ、『旨い!』と」
億単位の借金
辛氏は、焼き肉を研究するために日本中の店を食べ歩いたという。1日に5軒まわったこともあった。
「店では、お客さんのテーブルを見て回り、食べるタイミングを教えました。焼き方で、他店に差をつけようと思ったのです」
開店2年目から、行列のできる店になったという。
「とにかく、売上を伸ばすのに必死でした。というのは、当時、億単位の借金があったからです。私の母親は、六本木のテナントビルを借りて、カラオケバーを経営していました。賃貸契約を結び、保証金1億2118万円を支払ったのは1989年11月。92年11月に更新し、93年1月に契約は終了、保証金はその時返還されるはずだったんです」
賃貸契約は、母親ではなくて、辛氏の名義で行った。保証金も辛氏が銀行から借金して用意した。
「オバサンが社長よりも大学生が社長の方が世間的には受けが良かったのです。」
ところが、期限が来てもビルのオーナーは保証金を返還しなかったという。
「金がないと言われ、オーナーは行方をくらませてしまったんです。テナントは他にも7、8社ありましたが、みな泣き寝入りです。ビルの工事業者も工事代金を踏み倒されていたようです」
辛氏は当時、塾の講師を務めていたが、塾にまで借金取りが押し寄せた。塾講師を辞め、焼き肉屋を始めたのも、銀行の借金を返済するためだった。
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