厚労省に嫌われた「アビガン」 コロナ治療薬に承認されなかったのは“新参者”だから
ワクチンは特例
結果、第二部会は「現時点で得られたデータから、アビガンの有効性を明確に判断することは困難」と結論付け、継続審議とすることを決めた。
一方のワクチンだが、こちらも承認を急ぐため、じっくりとデータを集めているわけではないことは、読売新聞の記事で見た通りだ。
ところが、厚労省はワクチンの承認は前向きのようなのだ。テレビ朝日のニュースサイト「テレ朝NEWS」は12月21日、「ワクチン接種、国内状況は…『2月開始』へ急ピッチ」という記事を配信した。
《国内でのワクチン接種開始に向けた準備が着々と進められています。早ければ2月にもワクチンの接種を始めると、厚生労働省が自治体に説明していることが分かりました》
東京の墨田区保健所がテレビ朝日の取材に応じ、厚労省から「2月下旬から医療従事者、3月にも高齢者」に接種を始めたいと要請があったことを明かしている。
アビガンはデータが足りないから承認しないが、ワクチンはデータが少なくとも特例を認めるし、場合によっては海外の事例を参考にするから問題ないというわけだ。
こうした厚労省の姿勢を、前出の関係者は「矛盾していると言わざるを得ません」と指摘する。
「確かにコロナ禍は緊急事態ではあります。迅速な対処が求められていますが、ワクチンの副作用は未知数という問題は看過できません。一方のアビガンですが、少なくとも新型インフルエンザの治療薬としては承認された“実績”があります。動物実験で胎児に奇形を起こすという副作用も明らかになっており、妊娠中や授乳中の人にアビガンを投与してはならないという対応策も決まっています」
政治力の欠如?
どうして、厚労省はアビガンを“目の敵”にするのだろうか。
「1つは、アビガンの認可は薬系技官の許認可権限事項であり、責任をとらされるのは自分たちで、自分たちが進めてきたもの以外は認めたくない。外部の一切の介入を許さないという彼らに強い自負があるからでしょう」
もう1つは、富士フイルム富山化学が製造を行っていることが大きいという。
「同社の前身である富山化学工業は1930年、富山化学研究所として創立しました。61年には当時の東証と大証の2部に上場を果たし、2002年には大正製薬と資本・業務提携を行いました。そして08年に富士フイルムホールディングスの連結子会社となり、18年に完全子会社化したという経緯があります。大手の製薬会社と比較すると“新参者”であり、厚労省への影響力もありません」
更にネット上などで「厚労省の天下りを受け入れていないから、承認してもらえない」という指摘が散見される。今回の承認見送りで、そうした声が更に強くなるのかもしれない。
ちなみに関係者によると、「継続審議と言えば聞こえがいいが、実質的には承認しないという意味合いが強い」という。
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