NHK「おちょやん」…朝の連ドラに必須の厄介な父親、したたかなヒロイン、ドギツい台詞

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悲惨な境遇で

 そして毎田から杉咲花にバトンタッチ。

 女将のもやもやしとった過去の恋心にびしっと決着をつけさせたりと、すっかりデキる女中になった千代。奉公の年季もあけて、女中として生きる道を決意。

 やりがいもある、仲間もいる、恩返しもしたい。やっと生きがいと居場所を確保したと思ったら……アイツが来やがるわけですよ。クズ父・トータスが。

 そもそも夜逃げしたと聞かされて、天涯孤独を覚悟していたのに、性懲りもなくふらっと姿を現したトータス。借金返済のために、千代を売り飛ばそうとしているらしく、「正真正銘のクズ、ここにあり!」という展開に。

 親に感謝し、敬う。

 そんな当たり前のことができない悲惨な境遇で、「そんな親なら捨てちゃいな!」と思わず叫んじゃう。

 不謹慎だが、トータスは一刻も早く、できればちょっと劇的に死んでほしいなと思う父親像だ。娘が精神的にも経済的にも自立し、クズ父から解放されるための仕掛けはどう描かれるのか、も楽しみ。

 そういえば、この朝ドラ、のっけから意外と人が亡くなっている。千代の母・サエ(三戸なつめ)はほぼ遺影出演だし、喜劇役者・初代天海天海(茂山宗彦)は道で倒れてあっけなく亡くなった。

 女将と恋仲だった歌舞伎役者・早川延四郎(片岡松十郎)も、病と知らせずにひっそり亡くなっている。

 基本、喜劇テイストの中で、わりと身近な死がさらりと描かれるのは悪くない。

 昔の役者は「破天荒で、酒・女・博打と身を滅ぼし、短命」が印象付けられる。今後、おちょやんが女優として生きていくうえでのなんらかの布石になるのかもしれず。

 NHKのホームページを見る限り、まだまだ序の口。相関図を見ると、これからの展開が楽しみだ。

 個人的には今後登場する、カフェーの女給役・吉川愛と、松竹……じゃなくて鶴亀撮影所の助監督役・若葉竜也が気になる。杉咲もうまいが、このふたりも演技力ではひけをとらない。
 
 生き馬の目を抜く女優の世界は、面白おかしいだけでは済まされない。表裏一体の悲劇と喜劇がどんな色で描かれていくのか、じっくりねっとり味わおう。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月25日掲載

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