冷静さを欠く「ネット保守」に危機感 真偽不明のニュースを拡散で【最終回】(KAZUYA)
今回でこの連載は終了です。どこの馬の骨ともわからないYouTuberに、180回に亘って執筆の機会を与えてくれた週刊新潮編集部には感謝しかありません。
それにしてもこの3年間でいろいろと変わりました。「YouTuber」が一般的になり、チャンネルは増え、多彩になっています。一方で再生回数を稼ぐために迷惑系YouTuberと言われるような、世間を騒がせる人物も出ているのは残念でなりません。
他人に迷惑をかけて一時的に再生回数が伸び、収益が増えることもあるでしょう。しかし長い目で見ればマイナスにしかなりません。何事も長期的な視点を持ちたいものです。
そういう点から言えば、僕は今まさに短期的にはマイナスなことを発信しています。それは米大統領選挙の話題なのですが、日本のネットの保守層の一部はトランプ大統領の勝利を信じ、トランプ氏が主張する通り不正選挙を糾弾し、フェイクニュースであろうと何だろうと拡散しまくっているのです。
大規模な不正選挙があったのかなかったのか……個別のミスや不正はあったのかもしれませんが、結果を覆すようなものがあったのかといえば疑問です。そしてそれはアメリカの司法が決めることであって、日本人にはどうにもなりません。現時点で不正の証拠だとされるものは明確なものがなく、裁判は連戦連敗です。
しかし一定程度名の知れた方まで真偽不明のネット情報を拡散している状況はさすがにまずいと思い、動画でその旨を発信したのですが、大きな批判を浴びることになりました。感情的なものが多いのですが、冷静になって考える必要があるでしょう。というのもネットの保守層こそマスコミを普段から糾弾し、偏向報道やフェイクニュースには厳しい姿勢なのに、大統領選挙での真偽不明のニュース拡散はいいのかという話です。
YouTubeを始めて9年目に入りましたが、今が一番異常事態です。それも日本の選挙じゃないのに……。
今回の事象を考えると、日本の敗戦後にブラジルの日系移民の間で発生した「勝ち組・負け組騒動」が想起されます。当時、日本の敗戦が信じられず、戦争に勝ったと都合よく解釈した「勝ち組」と、現実を受け入れようとする「負け組」に分断されていました。当時は情報が絞られていたので仕方ない面もありますが、勝ち組は負け組に対するテロ行為まで行い、死傷者も出る事態になってしまったのです。対立は1950年代まで続いたと言います。
今は当時と違って情報が溢れています。それでも願望に都合よい情報を選択してつなぎ合わせ、世間一般とは乖離した認識が出来上がってしまうことがあるのではないかと危惧します。どう考えても不健全だと個人的には考えているので、短期的にチャンネル登録者数や再生回数が落ち込んでも問題提起するしかありません。
しばらく僕自身は苦しい時期が続きますが、それなりに頑張ろうと思いますので今後もどうぞよろしくお願いします。今までありがとうございました!